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2022.09.12 10:00

日本の自動車部品大手がシリコンバレーに「一軒家」を構えた理由

矢崎総業米国シリコンバレーの“TFTハウス”。筆者が現地にて撮影。


──なぜ、シリコンバレーに拠点「TFTハウス」をつくったのでしょう?
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弊社の米国法人であるYazaki North America(YNA)は、ミシガン州のカントン市に本社があります。弊社の主な顧客企業が自動車産業であるため、米国における自動車産業の中心地であるミシガン州に北中米における本社機能を構えているわけですが、YNAのCEO直轄であるOffice of the Presidentという部署を昨年4月に新設いたしまして、我々TFT(Task Force Team)はその中の1チームとして同年7月に発足しました。


TFTハウスは1階にオフィスと会議室とキッチンがあり、2階が生活空間。裏には憩いの場やプールがあり、シリコンバレーのスタートアップとオープンに話せる環境を創り上げている

一方、日本には研究開発部門であるYTC(Yazaki Research & Technology Center)が存在し、このYTCの直轄部門として、1992年にカリフォルニア南部Camarilloという町にYTCA(YTC America)を、その後2005年に同じくCamarilloにYII(Yazaki Innovation, Inc.)を設立しました。
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YTCA、YIIとが連携しながら、新しい技術やイノベーションを自社に取り込んでいくことを試みて、シリコンバレーのアクセラにも参画を致したりもしました。ところが、実際にやり始めてみると、なかなか社内の新規事業の創出にまで至らないという現状に直面しました。

組織が縦割りになっていることもあり、仮に新しいものが社内に持ち込まれたとしても、従来の部門の括りには当てはまりにくい。それならばと部門を超えて横断的に取り組もうとしても、効果的に組織内で進まないまま、結局立ち消えてになってしまう。そうした経験から、外部の新しい技術やサービスを組織にうまく取り込んで行くためには新しい仕組みが必要だと痛感したわけです。

──そこで、TFTが生まれたわけですね。

2021年7月に、サンノゼに立ち上げました。TFTは「Task Force Team」の略ですが、我々が目指すのは、矢崎総業が自動車業界で長年築き上げてきた技術力やアセットに、未来の社会に必要とされる発想をかけあわせ、しっかりと事業に結び付けていくこと。これこそ、我々の使命、Taskというわけです。

シリコンバレーは新しい発想やムーブメントの原点となるエコシステムが確立された場所であり、テスラで知られる電気自動車をはじめ、モビリティや自動運転、MaaSといった次世代の技術開発で既に多くの自動車メーカーも集まっています。

もともと我々の拠点は南カリフォルニアにありましたが、シリコンバレーに拠点を構えることで、今まで以上にスピード感を持って、より現地のエコシステムに深く入もうと考えました。


Yazaki North Central America, Innovation ディレクター 服部哲弘氏 
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文=熊谷伸栄

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