テクノロジー

2022.08.19 07:30

Metaのメタバースは単なる巨大な広告の場なのだ

安井克至

Getty Images

私は約22年間、テクノロジーについて記事を書いてきたが、現在ほど誇大広告のエンジンがフル回転しているのを見たことがない。

周りを見回すたびにメタバースが世界を席巻し、さらにFacebook(フェイスブック)を救い、最高の社会的つながりの触媒となるという新しいレポートが目に入るのだ。メタバースがあまり良くないかもしれないと書く人はほとんどいない。多くの人がプラス面ばかりに言及しがちだ。

すべては、霧であり鏡であり予言のようなものだ。私がどう思っているかって? 霧はやがて晴れる。それが起きるのは、メタバースがゲームやソーシャルにつながり、あるいはメタバースがバーチャルな冒険のためのものではないことに私たちが気づいたときかもしれない。

メタバースは「広告」のためのものなのだ。そして「買い物」のためのものでもあり、より多くの収益を上げるためのものでもある。

大きな期待が寄せられるメタバースだけに、このような表現は悲しい。しかし、バーチャルなスターバックスに足を運んで、友人たちといっしょに過ごすことを想像してみてほしい。誰かがラテを注文し、あなたは会話を始める。

気がつけば、バーチャルパットゴルフをしたり、仕事の悩みを打ち明けたり、現実世界で会話する計画を立てているかもしれない。未来の社会で私たち全員が学び、成長し、さらには成熟するのを助ける手段として、会話をし、つながることができるバーチャルアバターに反対するつもりはない。私はこれまで何度も仕事の面接をしてくれたり、授業を教えてくれたりするアバターがいたらどれほどクールかについて書いてきた。

オンラインゲーム、VRやAR、ソーシャルメディア、グラフィック技術、さらにはDiscord(ディスコード)のようなアプリの良いところを組み合わせて、ソーシャルメディアがバーチャルな社交場になるのは不可避なことだ。ならば私たちが愛するテクノロジーのすべてがリアルタイムに共存できる仮想世界を作ってみてはどうだろうか? コンピュータと高速回線は、何年も前からこの課題に取り組んできている。

テクノロジーの純粋な実現となると、フェイスブックのようなソーシャルメディア企業は残念ながらあまり良い実績を残してこなかった。必ず落とし穴がある。多くの場合、それは個人情報を取得し最高入札者にそれを販売することにつながっている。

メタバースはアテンションエコノミーを推進し、そこにはスポンサーつきコンテンツの巨大な砦が出現するだろう。たとえ私たちを永遠の深淵に誘い込むことに成功したとしても、経験そのものは台無しになってしまうはずだ。バーチャルなスターバックスは、集う場としては最高だが、Meta(メタ)がどのように現金をかき集めるかを理解するのは難しいことではない。彼らが私たちの「目」を手に入れたら、私たちの「財布」も手に入れるのだ。それは時間の問題だ。

私が期待しているのは、単に私たちの注目を集めて広告を表示するためだけではない、別の会社が(近いうちに)表に出てくることだ。これまでとはまったく異なるビジネスモデル、つまり現実の製品と実際のイノベーションを多くともなうビジネスモデルが生まれればすばらしいと思う。もちろん、暗号資産を持ってショッピングモールを散策することもできる。まだ実際には存在しないこの会社が、世界の中の商取引の部分を担ってくれるかもしれない。ただ、世界が商取引だけになってしまうのではないかという心配はある。

賛同してもらえるだろうか? メタバースについて、どう思っているだろうか? すべてがすばらしく、宣伝戦略のようなものはまったく存在しないのだろうか? メタバースの流行が、フェイスブックがお金儲けの方法を変えただけのものではないことを祈ろう。

翻訳=酒匂寛

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