2021年はおよそ400億ユーロの市場(最終消費財としてだけでなく、ホテルやオフィスなどのコントラクト案件を含む)です。2019年比+7%、2020年比+14%と、他分野が一様にパンデミックで苦戦するなか善戦しています。規模としてはグルメ(490億ユーロ)ファインアート(340億ユーロ)の間に位置します。ファッションやアクセサリーの市場は2830億ユーロです。
2022年6月9日、ベイン&カンパニー・ミラノオフィスのシニアパートナー、クラウディア・ダルピツィオが珍しい場に登壇しました。ミラノサローネ国際家具見本市で、デザイン市場に絞った分析と予測を語ったのです。ミラノサローネはイタリアの家具を輸出するために1961年にスタートした見本市です。パンデミック直前の2019年には180か国から約40万人が訪れました。
国際情勢が混乱している今年も、26万人以上が来場。61%が外国からでした。また、この見本市を核に市内各所でデザインイベントが1000近く開催される一大イベントに発展しました。世界各地にデザインイベントと称する行事がありますが、ここまで人を集め、しかもデザインを多角的に発信する機会はミラノをおいて他にないでしょう。
ベイン&カンパニーのクラウディア・ダルピツィオ氏が話す(Courtesy Salone del Mobile.Milano)
ベイン&カンパニー・ミラノオフィスは、イタリアのハイエンド企業の団体、アルタガンマ財団と組んでラグジュアリービジネスをリードしてきました。その中心人物がダルピツィオです。毎年、アルタガンマの年次報告会で彼女が市場分析と今後の見通しを発表すると、それが日刊紙で記事になるのです。
ぼく自身、彼女の報告は何度か聞いてきましたが、デザイン分野に限った内容は初めて聞きました。その場にアルタガンマの会長、事務局長、役員でありサローネの会長でもあるマリア・ポッロが同席しています。つまり、この場は、アルタガンマ財団とミラノサローネの提携プロジェクトなのです。
アルタガンマとのトーク(左から2番目がマリア・ポッロ氏)(Courtesy Salone del Mobile.Milano)
これまで、あらゆる人を対象とする「民主的」なサローネがラグジュアリーの香りを漂わせるのは、名の知れたデザイナーの新作発表が目玉になるコンテポラリーデザイン、様式を重視するクラシックといった、特定のパビリオンだけでした。
特に後者は高級ホテルだけでなく、中近東、ロシア、中国のニューリッチが豪邸のインテリアを一括して請け負うことも多く、エリート性が目立ち、旧型ラグジュアリーの代表的存在でもあります。