カナダでは先ごろ、61歳で生涯を終えたアラン・ニコルズのケースが注目を集めている。うつ病を患い、自殺願望があるとされていたニコルズは、安楽死の許可を申請した。ただ、同国では現時点では「精神疾患のみ」を抱えている人の安楽死は認められておらず、ニコルズは理由となり得る「慢性的な身体的苦痛」として、「重度の難聴」を申告した。
ニコルズの申請は認められ、実際に安楽死(医師のほう助による死)を迎えることとなった。だが、家族はこの件を警察に届けた。「健康上、ほう助による死が妥当とされるほどの深刻な問題を抱えていたわけではない」と主張している。
安楽死の対象は国で異なる
安楽死は、医師が処方した薬を患者が自ら服用する「自殺ほう助」と、医師が薬物を直接投与する「積極的安楽死」に分けて考えられている。積極的安楽死を2015年に合法化したカナダではここ3年、安楽死を選ぶ人の数が急速に増加している。
2000年代初めに医師のほう助による死を合法化したオランダ、ベルギーと比べて早いペースで増加しており(国や各州から入手可能なデータで比較)、昨年中にカナダで亡くなった人の3.3%が、医師のほう助による死を選んだ人だった。
認められる自殺ほう助の方法と同様に、末期症状や変性疾患の患者であること、激しい痛みがあること、不治の病とされていることなど、どのような人に安楽死の申請を認めるかについては、国によって基準が異なる。
カナダは昨年、その対象を拡大。ニコルズのように「障害はあるものの、末期症状があるわけではない人」の申請も認めることとした。これについては、障害者支援団体などから非難の声があがっている。