12歳から俳優活動を始めた長谷川は、現在はタレント活動に加え、自身の会社「jam」でアパレルブランド「Jam apparel」の運営や、企業のSNSマーケティングの企画運用なども手掛ける。
多方面で活躍する長谷川だが、その活動の原点はロンドン留学で感じた「恥ずかしさ」にあったという。
「みんなの方が私の国のことをよく知っている」
20歳でアパレルブランドを立ち上げたのち、ファッションを学ぶためにロンドンへ渡り、名門美大セントラル・セント・マーチンズに入学。そこで、ファッションやアートは社会問題を表現する方法のひとつだと学んだ。初めて社会問題に強い関心を持ったのは、このころだった。
多くの学生が自国の社会問題をテーマに挙げて作品に落とし込んでいく中、自分自身はこれといった日本の社会問題が思い当たらず、困ってしまった。すると、クラスメイトが口々に言った。「日本の広告に、胸を過剰に強調した女子高校生のイラストが掲載されて問題になっていたよね」「日本ってジェンダーギャップ指数ランキングがすごく低くなかったっけ」。
「みんなの方が私の国のことをよく知っている」。長谷川は、クラスメイトの社会問題への関心の高さに衝撃を受けた。
そもそも日本とは文化が違った。ロンドンの街に出れば、そこら中からイギリスの問題について議論する声が聞こえてきたのだ。当時のイギリスは「EU離脱の是非」が問われていた時期。ふらりと入ったカフェで、カップルや家族が残留派と離脱派に分かれて話し合っているというシーンに何度も遭遇した。
タクシーに乗れば、運転手に「EU離脱についてどう思う」と聞かれた。「私は日本人だからわからない」と言うと、「イギリスに住む日本人としてどう思うの」と問われ、うまく答えられずにその場を濁したこともあった。
思い返せば子どもの頃から父親の勧めもあり、新聞や雑誌を通して人一倍ニュースに触れてきた。ただ、子どものころは「ニュースを知る」という行為だけに終始して、自分自身の考えを持つことをしていなかった。ロンドンに行って、そんな自分を恥ずかしく感じた。