その急落は、米国の大学への留学生入学の方向性について新たな懸念を抱かせる。
中国人留学生は、米国の外国人留学生の中で最も大きな割合を占めており、外国人留学生全体の3分の1強を占めている。そのため留学先に対する彼らの嗜好の変化は、留学生市場における米国の伝統的な優位性に大きな衝撃を与えることになる。特に、ほとんどの留学生が州内の学生よりも高い非居住者学費を支払っている公立大学では、大学の収益が脅かされることになる。
米国の大学に通う中国人留学生の減少にともない留学生全体の出席者数も減少し、2020〜2021年には100万人を下回り、2014〜2015年以降最も低い数字となる。
中国からの留学生減少は、中国特有の要因がいくつかあるとはいえ、国際的な入学者数の行く末を心配する唯一の要因ではない。
まず、安全保障上のリスクがあると考えられる中国人の入国を禁止する命令など、トランプ前政権によるいくつかの敵対的な行動から、米国は中国人留学生に来てほしくないという認識が残っていることである。そうした懸念は根強い。
第二に、パンデミックが落ち着きつつあるように見えるにもかかわらず、中国における新型コロナに関連する特に厳しい渡航制限もさらなる障害となっている。
そして最近の米中政府間の地政学的関係の緊張が、中国の人々の間に米国は自分たちを敵視しており、子どもを学校に送るには安全でない場所になったという新たな不安を生んでいる。
以前から米国の教育機関は中国からの関心の低下を認識しており、その対策としてインドなどからの留学生を増やして損失を補おうとしている。
またここ数年、ソーシャルメディアやオンラインに頼っていた留学生募集を直接、対面して行うことに再び重点を置くようになった。
また、米国社会の暴力に関する報道はあるものの、大学は米国で学ぶことは安全だと留学生を再確認させようとしている。彼らは、メンタルヘルスサポートや留学生向けの新型コロナ関連の緊急学生基金などその他の学生サービスに新たな資源を投入している。例えばミズーリ州立大学では、インターナショナルケア&アドボカシーチームを設置した。大学のコミュニティ&グローバルパートナーシップ担当副学長ブラッド・ボーデンハウゼンによると、チームは「留学生がメンタルヘルスサポート、偏見防止、コミュニティとのつながりなど文化的に適切な資源を利用できるよう支援」しているという。