3. 素材のバイオ化だけではなく、設計のサーキュラー化
これらの企業に共通する点は、持続可能な森林資源由来の素材であることはもちろん、バイオ資源だからといってすぐさま設計をリニアにしていないことだ。再利用可能あるいはその後はリサイクルができるような設計が最大限取り入れられている。
つまり、素材のバイオ化だけでなく、材料設計においてもサーキュラリティが高められている。森林資源の価値を余すところなく使い切る考えが表現されているといえよう。(なお、Sulapacについては、生分解を目的としている素材のため、設計において長寿命化は考慮されていないが、耐久性を向上させる条件について解説している。)
4. バイオエコノミースタートアップの課題は?
期待が集まるこれらのスタートアップだが、一方でどのような課題があるのだろうか。ハカラさんはこう答える。
「最大の課題は商品化の問題です。技術としては開発されていますが、まだ商品化ができていないものが多くあります。製品になるまでには資金や商品化への技術が必要で、そこは日本企業との連携や共同研究に期待するところでもあります」
バイオ分野でのサーキュラーエコノミー移行に向け、双方が連携を深めることには大きな意味があるだろう。
5. サーキュラーエコノミーに即した海外展開戦略とは?
これらのスタートアップ企業には、生産設備などのリソースが揃っていないという課題がある。加えて、国内でスケールしても人口約550万人のフィンランドは市場として十分な規模ではない。当然ながら海外展開を視野に入れることが必要となる。
海外展開を考慮する際、まずは「モノの輸出」以外の方法を模索するという。サステナビリティやサーキュラーエコノミーの観点からこれらの企業が海外展開戦略として持つ基本的考えは、「モノ売り」から「知財売り」だとハカラさんは話す。「日本含め、フィンランド国外からモノを買いたいという企業が多いのですが、フィンランドでは知財を売りたいという希望を持つ企業が少なくありません」
ビジネスフィンランドが実施するフィンランド企業とのマッチング支援のあり方においても、この考えが適用されていることを強調された。
「ビジネスフィンランドのイノベーションファンドでは、サステナビリティが一つの活動基準になっています。たとえば、フィンランド企業が製造する木材由来の容器包装をフィンランドから日本に輸出したいという相談をいただく場合、まずはモノの輸出以外の方法(ライセンス販売など)を採用できないか助言する必要があるのです」
やはり、扱う素材がバイオという理由が大きい。モノの移動には環境負荷を含めたコストがかかることは言うまでもない。現地で調達・製造可能なものは現地で完結する方が小さな循環を構築できるとともに、環境再生にもつながりうる。