練習生に合格してから4年間、みっちりと歌やダンスを訓練した。
「練習生時代は毎月1回、評価会がありました。練習の成果をうまく発揮できなくて泣いたことも、歌を最後まで聴いてもらえないこともあった。隣でレッスンに励んでいた練習生仲間が、次の週にはいなくなる。そんなシビアな世界でした」
ユウタ自身、ギリギリのところまで評価ランクを落とし、帰国を覚悟したこともあったという。そんなときに決まって頭に蘇るのは、大阪の両親の言葉だった。
「帰ってくるな」という父の言葉と、電話で母に言われたひと言。
「ここであきらめたら、何のために頑張ってきたかわからなくなるよ」
これまで多くの日本人練習生を見てきたという事務所スタッフいわく、「厳しい競争を勝ち抜いていく子の親は、いい意味で放任主義」。子どもに対して絶対的信頼感をもっているので、親元を離れてからのことは全面的に本人に任せるのだという。
「無償の愛」をくれる存在がいたから
韓国。東京から飛行機で2時間半の隣国だが、文化は異なる。例えば、コミュニケーションの方法や、人との距離感。他人に踏み込まないことが「気遣い」とされる日本に対し、韓国ではお節介なくらい何かと関与してくる。
「最初は、ひとりになりたいと思うこともありました。でも韓国で過ごすうちに、それは愛情の深さだと気づいたんです。伝わらなければ愛ではない。例えば、誰かが僕に対し、直したほうがいいと思っていることがあるとする。でも、直してほしいとちゃんと伝えてくれなかったら、それが僕に対する愛だとわからない。韓国の人たちは、相手に対する愛情から、思っていることをストレートに伝えるんです」
ユウタはそれを「無償の愛」と表現する。率直な助言をくれる周囲の大人たちや、自分に期待してくれるファン、そして切磋琢磨しながら共に成長したメンバー。それぞれに「無償の愛」をくれる存在、彼の感受性はそう受け止めているのだ──。(この続きは8月24日発売『Forbes JAPAN』10月号でお読みいただけます)
NCT 127は韓国、日本、米国、カナダなど多国籍のメンバーからなる多グループで、2016年に韓国デビュー(写真)。グループ名はNeo Culture Texhnologyの頭文字と、韓国ソウルの軽度に由来する。「開放」と「拡張」がテーマ。
2018年には米ABCの人気番組「Jimmy Kimmel Live!」に出演、パフォーマンスが全米の注目を集めた(写真=Getty Images)。2021年にはアルバム『Sticker』がビルボード4部門で1位になるなど快進撃を続ける。
ユウタは今年、演技に初挑戦。9月9日に全国劇場公開される映画『HiGH&LOW THE WORST X(クロス)』では、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEの川村壱馬や吉野北人、BE:FIRSTのRYOKIらと共演する (c)2022「HiGH&LOW THE WORST X」製作委員会 (c)髙橋ヒロシ(秋田書店) HI-AX