これで魂は込められるのか? 僕の執筆用最新テクノロジーを公開する

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そのことに興味を惹かれ、散歩の時にはもっぱら朗読を聞くことにしている僕は、デスク周りで導入してみた。あまり深く考えず、頭の中に断片として浮かび上がっているアイディアをどんどん口に出して書き留めていくわけである。

実際の原稿も、手が疲れていたときや、かなり頻繁に出てくるフレーズは、音声入力に切り替えて入力することがある。さらに、言葉が溢れてきて、タイピングが追いつかない場合にも。

音声入力アプリといえば、少し前まではだいたい「ドラゴンスピーチ」と「AmiVoice」の二択といわれていて、僕は AmiVoice SP2のほうを使っていた。ただ、数年前にドラゴンスピーチとともに販売を停止しサポートもしなくなったので不安に思っていたところ、ネット上に「Sokki Voice」というシェアウェアを見つけてこれを試用したら、変換の精度がよいので驚いた。

実はこのアプリ、変換機能自体はグーグル辞書を使っているらしい。なるほど、ビッグデータで鍛え上げられているからこその変換精度なのだろう。有名人の固有名詞などはほとんど一発で決まる。ちょっと感動したのは、「きみつなぎふぁいぶえむ」と発音したら、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの名盤として知られる「君繋ファイブエム」に変換してくれたことだ。

これまで、グーグル辞書はグーグルドキュメントでのみ使えたが、これを他のアプリでも直接入力できるように改良して、さらにかゆいところに手が届くようにしてくれたのがSokki Voiceである。値段も2500円と良心的だ。1週間ほどお試しで試用してから買うかどうか決めようと思ったが、使い始めたその日に購入を決めた。

文章に魂がこもらないという批判


Sokki Voiceはグーグル辞書を利用していると書いたが、僕はほかにもプラットフォーマーが提供しているサービスを執筆作業に利用している。グーグルマップで作品専用の地図をつくり、僕の主人公の住居や勤務先などをピン留めして、視覚的に把握できるようにしてある。

例えば「マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白」で黒木という男がスイスで借りた家も、彼がよく利用したレストランも、腕時計を買った店も、専用地図内にピン留めされてある。
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文=榎本憲男

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