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2022.08.20 12:00

ニューヨーカーに日本産米は浸透するか? 価格競争力高まる


一方で、日本の輸出業者からは国際物流の混乱を懸念する声もある。アメリカに日本産米を輸出している横浜市の米卸会社「千田みずほ」社長の千田法久は、「輸送費の大幅上昇と船舶の減少によって、引き合いがあっても輸出できなかったり、成約したはずの船が確保できなかったりと、干ばつや円安の追い風の強さは減殺されている」と話す。

そんな状況下でも、農水省によると、2021年のアメリカ向け日本産米輸出量は2244トンで、2020年よりも255トン増加。今年1~5月の輸出量も1172トンと、前年の同時期よりも365トン増加した。

米穀輸出企画班の担当者はこうした数字について「海上運賃の高騰やコンテナ不足の影響はあるものの、それでも既存の取引をつなげたり新しい取引先を見つけたりと輸出事業者が取り組んできた結果」と説明。カリフォルニア産米の高騰によって日本産米のオーダーが増えていることに加え、各輸出事業者の努力によって輸出量は着実に増えている。


ニューヨークの日系スーパーに並ぶ日本産米パックごはん

ニューヨークの学校給食にONIGIRIを


今年2月から3月にかけて在ニューヨーク総領事館とJETROニューヨークが中心となり、現地の日本人経営の飲食店や小売店などの協力を得て「おにぎりプロモーション」を展開した。そのうちの一つの取り組みは、ニューヨークの学校や企業など約25カ所へのランチ用おにぎり計3000個の配布。狙いは、「未来への“種まき”」と「ランチの選択肢の提案」だ。

仲村は、特に小学校へのおにぎりの配布について、「子どもたちがおにぎりを食べて喜んでいる姿を保護者や先生たちにも見てもらい、ゆくゆくは学校給食のメニューとして提供されたらインパクトが大きい」と期待を込める。

「サンドイッチのように片手で仕事しながらでも食べることができる」(仲村)という点もオフィスワーカーに好まれると考え、今後はオフィス街でおにぎりのポップアップストアやフードトラックなどの展開も視野に入れてランチ需要の開拓を狙っていきたいという。

在ニューヨーク総領事館とJETROニューヨークが日本産米を訴求するためにおにぎりに目をつけた理由は、「冷めてもおいしい」という日本産米の特徴を強みとして生かすため。カリフォルニア産短粒種は炊きたてでは日本産米並みの食味と評価する声は多いが、冷めたら日本産に比べて味が落ちるという声もあり、冷めた状態で食べるおにぎりならば確実に日本産米が選ばれると見込んでいる。

ニューヨークにある日本の和食チェーン店「大戸屋」の子会社「AMERICA OOTOYA」では、2019年9月にカリフォルニア産短粒種から日本産米に切り替えた。「冷めると日本産米のほうが断然甘味が強い」(AMERICA OOTOYA社長の吉元出)ことからおにぎりの可能性を探り続けていた同社は、2021年2 〜3月に大戸屋タイムズスクエア店に期間限定のおにぎりコーナーを設置。反響の大きさから今年5月には常設オープンした。「店内飲食はアジア人が7割ですが、おにぎりコーナーは白人が5割」(吉元)と、短粒種になじみが薄い層からの人気も博している。

2013年3月にアメリカに進出した日本のおむすび(おにぎり)チェーン「おむすび権米衛」も好調で、その様子は以前に「おむすび権米衛、海外店が過去最高売り上げ!コロナ禍でも快進撃のワケ」でも紹介した。
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文=柏木智帆

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