ニューヨーカーに日本産米は浸透するか? 価格競争力高まる

おにぎりプロモーションの一環で配布されたおにぎりを食べる子ども(在ニューヨーク総領事館提供)



GOHAN Fesで開かれた「おにぎり体験会」でおにぎりを作る参加者たち(Jforward.inc提供)

今年7月には全米最大の日本食フェスティバル「JAPAN Fes」(現地企業「Jforward」主催)の一画で、在ニューヨーク総領事館とJETROニューヨークで作る「輸出支援プラットフォーム」の取り組みとして「GOHAN Fes」を開催。日本人経営の現地飲食店6店がニューヨークのストリートで日本産米を使ったおにぎりや寿司などを販売した。

出店した「MakiRevo /TabiKase〜旅する・おまかせ」は、通常はカリフォルニア産短粒種を使って寿司の販売、シェフケータリングなどを行なっているが、この日の寿司には日本産米を使用。代表の朝田万紀子は「カリフォルニア産では味わえないもちもち感に感動しっぱなしだった」と振り返る。早速7月から日本産米に切り替え、今後は「日本産米の酢飯」をブランドの柱の一つにしていくという。

現在、ニューヨーク州の日本食レストランは2727店舗(2021年6月時点・在ニューヨーク総領事館提供)。「日本食レストランのお米が日本産に置き換わったり、メニューに日本産米おにぎりが登場するようになれば日本からの輸出促進の後押しになる」と仲村。前出の大戸屋にも日本産米を卸している米屋「the rice factory」では、販売件数と取引飲食店が昨年よりも120〜130%程度増加するなど、日本産米需要は徐々に高まっている。


GOHAN Fesでおにぎりを楽しむ女性たち(Jforward.inc提供)

じわりと進むカリフォルニア産からの切り替え


一方で、ONIGIRIを家庭で作るには炊飯が壁となる。そこで家庭でも気軽にONIGIRIを楽しんでもらうために注目されているのが「PACKED RICE(パックごはん・無菌化包装米飯)」だ。

パックごはんは低価格の競合国商品もあるが、千田みずほの千田は「日本のお米は柔らかくて粘りがあり、経時劣化にも強い性質がある。“日本産プレミアム”の市場を形成できるかどうかだが、品質では日本製品が1歩も2歩も上」と太鼓判を押す。仲村も「パックごはんはアメリカではまだ認知度が低いが、『パックごはんと言えば日本産』とブランド化できれば、諸外国のパックごはんは大きな競合にはならない」と、期待を込める。

GOHAN Fesでは、日本産米パックごはんを使った試食を提供したり、日本食eコマースサイト「Umami Square」でGOHAN Fesと連動したパックごはんキャンペーンを展開したりと、日本産米パックごはんのPRに力を入れた。同サイトでは、日本産米パックごはんを使ったキャラ弁キットやちらし寿司キットも販売。日本の食文化とお米をセットで売り込むことで、日本産米が求められる食文化の醸成にもつながりそうだ。

農水省が打ち出す、お米関連の輸出額目標は2025年までに30億円。目標が達成する頃のニューヨークでは、中食外食で日本産米おにぎりを食べ、内食では日本産米パックごはんを使っておにぎりを作るといった光景が当たり前になるのだろうか。

文=柏木智帆

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