ビジネス

2022.08.18 14:30

アフターピルが飲める「島」? レイプ被害者を救う奇想天外なアイデア

Ogilvy - Honduras - Morning After Islandより

「Morning After Pill(モーニングアフターピル)」という言葉をご存じだろうか。レイプなど様々な理由で避妊せずに行われた性交に対して、事後的に避妊を行う錠剤薬のことだ。

日本では、一般的にアフターピルあるいは緊急避妊薬と呼ばれているこの処方は、しかるべき医師の診断があれば問題なく使うことができる。女性にとって必要で重要な権利だが、ラテンアメリカの国ホンジュラスでは、法律で禁じられていた。

そこで、女性権利支援団体のGE PAEが行ったプロジェクトがMorning After Islandである。この事例は、6月にフランスで開催されたカンヌライオンズ2022で、ブランド・エクスペリエンス&アクティベーション部門ゴールドなどを受賞した。ちなみにカンヌライオンズとは、世界の広告界やマーケティング界で飛びぬけて大きな影響力を持つアワ−ドである。

緊急避妊薬を飲める「島」をつくろう


ラテンアメリカ地域で唯一の緊急避妊薬禁止国であるホンジュラスでは、少女の4人に1人が18歳以下で出産する。そのうちの半分が、近しい男性によるレイプに起因するという。こうした事実があっても、保守的なメディアや一部の宗教指導者は、緊急避妊薬規制撤廃を訴える人達を“殺人者”など呼んで攻撃していた。

そのような状況の中でできることは何か? GE PAEが行き着いた結論は、ホンジュラス政府の規制が及ばない公海上に、起訴される危険のない緊急避妊薬を飲める場所をつくろう、というアイデアだった。

この場所は、緊急避妊薬を表すMorning After PillにちなんでMorning After Islandと名付けた。数メートル四方のいかだのような“島”を設置し、その“島”に希望する女性達を無料で連れて行って緊急避妊薬を服用してもらう。そんなツアーを毎週開催した。


Ogilvy - Honduras - Morning After Island
次ページ > 200万人分の署名が集まり、政府にも動き

文=佐藤達郎

ForbesBrandVoice

人気記事