NYでポリオウイルスが拡散か 下水から検出と保健当局が発表

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米ニューヨーク市の当局はこのほど、まひなどを起こすことがあるポリオウイルスが同市の下水から検出されたと発表し、ワクチン未接種の人に予防接種を受けるよう促した。ニューヨーク州では1カ月前、ほぼ10年ぶりとなるポリオ感染例が確認されていた。

ニューヨーク市保健精神衛生局によると、下水からのポリオウイルス検出はウイルスの局所的な循環と感染を示している可能性が高いという。

今回のポリオウイルス検出は「憂慮すべきことではあるが、驚くべきことではない」とニューヨーク州保健局長のメアリー・バセットは述べ、州保健局は自治体や連邦政府と協力して対応していると付け加えた。

ニューヨーク市保健局長のアシュウィン・バサンは、ポリオは「完全に予防可能」であり、再出現はワクチン接種を受ける「行動への呼びかけ」となるべきだと話している。

ニューヨーク州保健当局は先月、ワクチン未接種の男性がポリオ発症によりまひを起こした同州ロックランド郡を含む2つの郡の排水からポリオウイルスが検出されたことを明らかにした。

保健当局によると、ニューヨーク市の生後6カ月から5歳までの子どものうち、ポリオワクチンを3回接種している割合は86.2%にとどまり、この数字は2019年から低下している。米国の2歳児で3回接種している割合(92.6%)を下回っている。

英ロンドンの保健当局は先週、ロンドン北部と東部の排水から数十年ぶりにワクチン由来のポリオウイルスが検出されたことを受け、10歳未満の子どもたちにポリオワクチンの追加接種を行うキャンペーンを開始した。検出されたウイルスの量とその遺伝的多様性は「何人かの個人の近い関係を超えたある程度のウイルス感染」があったことを示唆していると保健当局は発表したが、一方でロンドンではまだポリオの症例が確認されていないとも指摘した。

ポリオは伝染性のウイルスで、主に糞便との接触、ときには咳やくしゃみによって感染する。米疾病対策センター(CDC)によると、ポリオワクチンが作られる前の1950年代前半には年間約1万5000人がポリオによってまひを起こしていた。

ポリオウイルスは、ワクチン接種の取り組みにより世界の多くの国で根絶されたが、近年、ワクチン由来の患者が増加している。ワクチン接種を受けた人は、生きたウイルスを便の中に排出し、それが汚水を通じて広がる可能性がある。排出されたウイルスは汚染された下水に触れると突然変異を起こし、他の人を感染させ、ときにまひを起こす可能性がある。

ニューヨーク州の保健当局は今月初め、ワクチン接種率が低いニューヨーク州の2つの郡の排水からポリオウイルスが検出されたことを明らかにした。ワクチン接種率が60.3%のロックランド郡では、ワクチン未接種の20歳の男性がワクチン由来のポリオ症例によりまひを発症している。オレンジ郡では2歳以下の子どもの58.6%がワクチン接種を受けている。ニューヨーク州のワクチン接種率は78.9%だ。

バセットは声明で、まひに至るポリオの症例1件につき「さらに数百件の感染が検知されていない可能性がある」と述べている。

翻訳=溝口慈子

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