Yコンビネータのプレジデントのジェフ・ラルストンはFivetranを、彼らが育成した3800社以上のスタートアップの中の、究極の「ゴキブリ」の1つに数えている。「大半のスタートアップは、数年の間、間違った方向に進んだ後にあきらめて会社を畳んでしまう。けれど、Fivetranのチームにはゴキブリのような生命力があり、自分たちが行き詰まったなんて思わなかったのだ」
フレイザーは、さっそくサンフランシスコのIconiq CapitalやニューヨークのD1 Capital Partnersなどの投資会社5社に電話をかけ、買収資金として5億6500万ドルが必要だと伝えた。すると3日もしないうちに、すべての企業が出資に同意した。「思ってもみなかった方法で、道が開けた」とフレイザーは話す。
買収によってFivetranの企業価値は56億ドルに上昇したが、本当の価値は、HVRが大手のテック企業との取引から得ていた約3000万ドルの売上で、そのおかげでFivetranは、同業他社よりも強固な足場をテクノロジー業界で築くことができた。
今年のフォーブスのCloud 100ランキングで27位に選ばれたFivetranの、直近の1年間の売上は約1億8900万ドルで、昨年の2倍以上に膨らんだ。同社は現在、JetBlue、Forever 21、チキン・チェーンのNando’sなどを顧客に抱えている。
Fivetranの過去3回の調達ラウンドでリードインベスターを務めたアンドリーセン・ホロウィッツのマーティン・カサドは、データパイプラインにおける彼らの市場リードを「揺るぎないもの」と評している。
ムグリアは、Fivetranのプロダクトの一番のセールスポイントは「シンプルな使い勝手の良さだ」と述べている。しかし、そのシンプルさは、毎日真夜中に起きてデータの管理を行うフレイザーの勤勉さと情熱に支えられている。
「ジョージ(フレイザー)ほど頭のいい人が、これほど平凡な問題に取り組んでいるのは珍しい」とアンドリーセン・ホロウィッツのカサドは言う(フレイザーは、ピッツバーグ大学で神経生物学の博士号を取得している)。
Fivetranは現在、2億ドルという潤沢なキャッシュを保有しているが、フレイザーは、今後2年以内に再度の資金調達を行い、その後、会社を上場させる計画という。会社の本社はサンフランシスコに置いているが、ウィスコンシン州の小さな町で暮らしているせいで、失敗は許されないとフレイザーは話す。
「近所の人たちはみんな、私の会社のことを知っている。だからこそ、事業を本当に成功させなければならない。さもなければ、この町で生きていくことはできないだろう」と彼は語った。