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2022.08.16 12:00

Yコンビネータ出身のクラウド企業「Fivetran」がサバイブできた理由

Getty Images

2021年8月のある夏の日、ジョージ・フレイザーは、米国中西部の最北に位置するウィスコンシン州の森の奥にある湖畔の小屋でくつろごうとしていた。しかし、Fivetran社の共同創業者でCEOの彼は、幼なじみのテイラー・ブラウンと9年かけて築きあげた会社のことを心配していた。

2人のビジネスのアイデアは、ツイッターのメンションやクレジットカードの取引履歴などの、あらゆるソースから集めたビッグデータを大手企業に提供し、SnowflakeやDatabricksなどのクラウド企業と同様なビジネスモデルで収益化するというものだった。

フレイザーとブラウンは、Yコンビネータのスタートアップ育成プログラムを経て、1億6000万ドル(約216億円)を調達していた。2人は、数え切れないほどの時間を費やしてテクノロジーのディテールを磨き上げてきたが、今だに大手企業向けのプロダクトを生み出せていなかった。

「何年もの間、私たちは問題に直面していた。道のりはまだ長いと考えていた」とフレイザーは話す。

Fivetran社の役員会のメンバーの1人が、かつてSnowflakeのCEOを務めたボブ・ムグリアだ。彼は、マイクロソフトのツールビジネス担当プレジデントを務めていた時代に、オラクルに法人顧客を奪われ、「ステイーブ・バルマーにこてんぱんにやられた」と振り返る(2011年に彼の後任に選ばれたのが、現マイクロソフトCEOのサティア・ナデラだった)。

ムグリアは5年をかけてSnowflakeを作り上げたが、同社がIPOを果たす1年半前に会社から追い出されていた。そして今、彼はフレイザーに「もう時間がないんだ」と檄を飛ばしていた。「私は、彼らを怒鳴りつけて言ってやった。畜生、まだプロダクトが出来ないのか! ってね」

転機となった競合の買収


フレイザーは、実家にある曽祖父のデスクで思いをめぐらせた。その結果、きわめて古典的な問題解決策に行き着いた。それは、自分の会社よりも先行している競合を買収することだった。Fivetranと同じサンフランシスコを拠点とするHVR社は、企業との取引で先行しており、フレイザーは同社が7億ドルで買収可能であることを人づてに聞いていた。ただし、相手が取引に応じるのは1週間以内に資金を用意できる場合に限られていた。

その当時の評価額が12億ドルと、さほど高くは評価されていなかったFivetran社にはそのための資金が無かった。しかし、フレイザーは、シリコンバレーに多くのつてを持っており、図太くもあった。
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編集=上田裕資

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