寄付は「社会をつくる資本」 NPO法人への寄付拡大、伴走強化

村上財団代表理事の村上玲(左)、認定NPO法人D×P(ディーピー)理事長の今井紀明(右)


今井:これらは行政の委託支援ではないので、NPO法人が意思を持って、自ら判断して、必要だと思うことに、自由度高くお金を使える。企業も行政もアプローチできないことに対して、寄付を原資にしてできることは強みですね。だから、寄付者さんとともにつくってきた事業だと思っています。よく話をするのですが、寄付は「社会をつくる資本」だと思っていて、新しい制度や新しい仕組みをつくるときの重要な資金になりますから。

村上:「こどもの貧困」は大きなテーマです。7人に1人が相対的貧困であることをはじめ、問題に対する認知度が上がっています。とはいえ、「こども」というと、10歳以下のイメージが強い。我々も、認定NPO法人フローレンスや認定NPO法人キッズドアをはじめ、こどもの貧困に取り組むNPOにも支援していますが、小さいこどもの貧困支援をしたにもかかわらず、(D×Pが支援している15〜25歳の)若者時点でも、家庭環境や経済的に困難な生活をしていると「孤立」に陥りやすい。

「孤立してしまうと、様々なセーフティネットに届かず、抜け落ちてしまう」と私は理解しているのですが、どうでしょうか。

今井:その通りです。今回、支援現場での調査で、ユキサキチャット利用者で、社会保障制度を知らない・わからないと回答した若者たちが6割にのぼることがわかりました。ユキサキチャットに問い合わせをしている(緊急度の高い)時点の利用者で6割ですから、そもそも社会保障制度があっても利用できる可能性が低い。

また、ユキサキチャットの現金給付や食糧支援を受けている若者の27.1%が「困っていることを誰にも相談できない」と問い合わせに答えています。加えて、両親や親族に相談した若者も24.5%程度しかいない。さらに、民間機関、行政に相談する率も極端に低い。若者層にとって、セーフティネットや相談機能がリーチできる仕組みではなく、そもそも制度すら知らないとなると、余計ハードルが高いということがわかりました。

村上:ユキサキチャットのようなオンライン相談で、顔が見えない方が相談しやすいなど、現場の知見があるNPOのみなさんは、「現場でいま何が必要なのか」ということに、柔軟かつ、迅速に対応できていると感じます。

今井:政府も、孤独・孤立対策の一環で、チャットボットを作っており、「仕組み自体」はあります。ただ、相談機関で縦割りであるという問題があります。僕らは、虐待、貧困など全般的に若者の孤立問題に取り組んでいるがゆえに、できている支援があると思っています。一旦、僕らで引き受けて、食糧支援、現金給付支援をして、公的支援までつなげるということを一貫してできている点は強みだと思います。 
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文=山本智之 写真=平岩享

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