新型コロナで「再び働くことはない」と50代以上の英国労働者が大量離職

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私はこれまで何度か、年配の労働者の価値と、社会がかれらに対する見方を変える必要性について書いてきた。近年、経済界でスキル不足が叫ばれていることを考えると、なおさらである。

したがって、パンデミックによって大量の高齢労働者が離職していることは、大いに憂慮すべきことである。英国だけでも、パンデミックが開始以来、50歳から65歳の労働者が約30万人、経済的に活動的ではないことが確認されている。

経済活動の不活性化


エセックス大学の最近の研究では、この経済的に不活性であることが経済に与える可能性のある影響のいくつかを探っている。その結果、離職者は経済的に安定した人であると直感的に思われるかもしれないが、実際には中低所得者が離職する傾向にあることが明らかになった。

実際、経済的な不活性が最も高まっているのは、年収1万8000ポンド(約290万円)から2万5000ポンド(約400万円)の人たちである。しかも、この傾向は、経済状況が好転しても元に戻ることはなさそうである。

同様に持ち家ではなく賃貸住宅に住む人々や、一般的に低賃金の職業や産業に従事する人々の間でも、経済活動の不活性化が増えている。

「最も心配なのは、この増加のすべてが仕事をしたくないと述べ、将来再び働くことは絶対にないと考えている人々から生じていることだ」と著者らは説明している。「つまり、仕事をしたいけれどもうまくいかずに仕事を探すのをやめてしまった落胆した労働者ではない可能性が高いのだ」

長期的な減少


では、なぜこれほど大量に離職者が出ているのだろうか。その理由はさまざまだ。例えば小売業、運輸業、製造業などの業種にこれだけこの動きが集中しているということは、パンデミック以前から苦戦していた業種やパンデミック時に大きな打撃を受けた業種が最終的に回復するという確信が労働者にないことを示唆している。そのため、再教育や新しい分野での仕事を探すよりも、退職する方が簡単だと考えられているのかもしれない。

また、これらの分野は同僚や顧客との社会的接触が多く、通常、リモートワークが選択肢にないことも特徴である。その結果、離職の決断には健康上の要因が絡んでいる可能性が高い。

「50代以上の非活動率が最も高くなるのは、退職と病気によるものだ。病気による非活動性の上昇は、新型コロナの数年前に上昇し始めた可能性があり、ウイルスそのものというよりも、既存の傾向を反映している」と著者らは説明している。

利益の減少


このように、働くことから得られる利益について一般的に悲観的な見方は、少なくとも2008年の金融危機の後には、経済的不活動は逆転していたが、新型コロナの後には、それほど単純ではない可能性があることを示唆している。
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翻訳=上西 雄太

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