トランペットなどの金管楽器でウイルスが拡散、米大学の研究

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ここ数年、音楽家や科学者らは、オーケストラの演奏が新型コロナウイルスの拡散につながるリスクを認識するようになった。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団でさえ、楽器が近くに座っている人々に与える危険性を調査する研究を実施した。

そんな中、コロラド州立大学(CSU)の研究チームが最近発表した論文で、管楽器、特に金管楽器が呼吸器系の粒子を撒き散らす可能性が高いことが示された。

エアロゾルの専門家で機械工学の教授のJohn VolckensとCSUの研究チームは、81人のボランティアの音楽家の協力を得て、異なる管楽器がどのように呼吸器系粒子を拡散するか、そのリスクを低減するためにはどのような対策が可能かを調査した。その結果、チューバやトランペット、トロンボーンなどの金管楽器は、オーボエやクラリネット、ファゴットなどの木管楽器に比べて、平均約3倍ものエアロゾルを撒き散らしていることが分かったという。

金管楽器のリスクを減らす方法としては、楽器の先端にベルカバーを装着する方法がある。しかし、Volckens教授は、この施策は不十分である可能性が高いと警告した。

「ベルカバーは密着性が低いため、口や楽器から出る粒子を半分から75%程度までしか、カットできていない。これらの施策では、N95レベルの保護は達成できない。さらに、ベルカバーはオーボエとクラリネットにはほとんど効果を示せなかった」と、教授は述べている。

楽器の演奏を通じて、ウイルスが広がることが確認できたことを踏まえ、Volckens教授はパンデミックの初期にコンサート会場や練習場を閉鎖したことが、命を救った可能性が高い点を強調した。

「その決断とそれが引き起こした経済的・精神的苦痛を受け入れた彼らを称えたいと思う。人々のために犠牲を払ってくれた彼らに感謝したい」と教授は述べている。

現在、多くのオーケストラやバンドは、さまざまなレベルの安全対策を施しながら、通常のリハーサルに復帰している。しかし、どの楽器がエアロゾルを最も拡散させるかを正確に理解することは、次のパンデミックがやってきた際にも、きっと役立つはずだ。

編集=上田裕資

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