ビジネス

2022.08.15

ヒントは百貨店にあり。ネットxリアルの新たな価値

中山亮太郎のビジネス夜明け前


渋谷パルコの“変化”にチャンスを見た


百貨店やショッピングセンターなどの大型商業施設は世界中に存在しているが、出店の中心はファッション産業で、多くの場合、そこにレストランフロアが付随している。商業施設側もファッション産業を最重要顧客ととらえているのだろう。テナントとしてインターネットサービスが出店しているケースは、まだまだ少ない。だが、こうした大型商業施設の主なビジネスモデルはテナントの場所代(見方によっては不動産業といわれるゆえんだ)なので、賃料収入が見込めるテナントを求めて、彼らがネット業界やデジタルコンテンツ業界に触手を伸ばすのは不思議ではない。

例えば渋谷パルコには、2019年に任天堂や集英社などのコンテンツ企業が出店。ゲームや漫画の世界観を拡張するリアル店舗が集積するフロアは、ファッションフロアをしのぐほどの人気を集めている。

この変化は、ネット業界にとってもチャンスといえる。新しい総合体験をつくりやすくなるからだ。多くのインターネット企業が収益を上げるなか、そしてマネタイズがオンラインで十分完結する業態が多いなか、リアルの場に限ったマネタイズで、ユーザーに自社の世界観や体験をより届ける手法として、リアルも含めたトータルな体験設計がひとつのテーマになってくるだろう。

かつて映画は、テーマパークというリアルの場をつくることで、映画というデジタルコンテンツの感動やエンゲージメントを高めてきた。ディズニーランドやユニバーサル・スタジオはその成功例として参考になることが多そうだ。

インターネットが当たり前になった時代において、リアルとネットの垣根を越えた顧客体験をどうつくるかは、コロナ禍以降にいま一度、面白いテーマになると考えている。

なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。

文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

この記事は 「Forbes JAPAN No.097 2022年9月号(2022/7/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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