小暮:その通りです。イタリアの男性はクルマや女性の話をしだしたら止まらない。それは森岡さんと同じかな(笑)。
森岡:またまた、そんな冗談はやめてくださいよ。でもそんなイタリアだからこそ生まれた靴かもしれませんね。
小暮:森岡さん、このソールを見てください。「ラバーペブル」のまわりを見ると、実に細かく、凝った縫製をしている。革底からこの「ペブル」を出して縫製するだけでも大変です。その突起が100個以上ソールに付いているわけですよ。「トッズ」の靴は多いもので100以上の工程を経てつくられています。代々伝わってきた職人技なくしてこの靴を仕立てることはできないでしょうね。
森岡:もちろんカジュアルなスタイルに絶好なデザインだと思いますが、最近はドレスクロージングもカジュアル化していますので、その場合も似合う。ラグジュアリー系のスポーティな着こなしには相性抜群です。しかも足元にエレガントな雰囲気が出るので、普通の服に合わせても、センスよく見せることができる。
小暮:「トッズ」がこの靴を発表したのは1970年代と聞いていますが、それからずっとロングセラーを続けている。私が90年代にはじめて「トッズ」を見つけたとき、欲しくてミラノ・スピガ通りのショップに行きましたが、お客様がいっぱいでなかなか買えませんでした。
森岡:世界中で人気の靴ですが、イタリア人にとっては欠かせない靴のひとつ。長年つくっているということは、「トッズ」というブランドにとってもこのモデルにブランドの軸足があり、象徴でもあるということ。
小暮:個人的には、靴遺産に認定してもいい。名品中の名品ですね(笑)。
森岡 弘◎『メンズクラブ』にてファッションエディターの修業を積んだ後、1996年に独立。会社グローブを設立し、広告、雑誌、タレント、文化人、政治家、実業家などのスタイリングを行う。ファッションを中心に活躍の場を広げ、現在に至る。
小暮昌弘◎1957年生まれ。埼玉県出身。法政大学卒業。82年、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。83年から『メンズクラブ』編集部へ。2006年から07年まで『メンズクラブ』編集長。09年よりフリーランスの編集者に。