不況の影響を強く受ける若者をメンタル面でも支援する必要性

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機会を増やす


しかし、若者がより高い志を持てば、社会的不平等がなくなるというわけではない。例えば、ボストンカレッジの最近の研究では、経済的不平等の拡大が社会的流動性をさらに難しくしていることが明らかにされている。この研究では、経済的不平等が拡大すると不利な立場にある若者にとって上昇移動が事実上不可能に感じられ、その結果、モチベーションが低下し生産性の低い行動につながることが明らかにされている。

アイオワ州立大学の研究は、教育がその第一歩であると提唱しており退学率の低下、増税、上昇志向の高まりなど、公教育への支出とその投資に対するリターンには直接的な関係があることが明らかにされている。

しかし、教育だけでは十分ではない。バース大学の最近の研究では職業体験、特に1年間の職場体験が社会的流動性に与える影響について調査している。特に近年、社会的流動性の変化に最も抵抗しているハイレベルなプロフェッショナルサービス企業への就職に大きな影響を与えることがわかった。

若者が求めるもの


英国協同組合が全国ユースサミットで発表した調査結果では、若者の66%が、自分たちにとって良い仕事が十分にないと考えていることがわかった。この「良い仕事」への欲求は、ニューカッスル大学の最近の研究でも強調されており、ヨーロッパ11カ国の18歳から35歳までの人々の仕事に対する価値観を調査したものだ。

その結果、現在の仕事の質と過去の失業経験が、仕事に対するモチベーションに影響を与えることが明らかになった。

「キャリアの初期に失業や低品質の仕事を経験すると、その人の仕事に対する価値観に直接影響を与え、モチベーションや給与などの待遇に対する考え方に長期的な影響を与えることがあります。若者は自分のやっている仕事と自分のスキルや経験との間にミスマッチがあると感じている場合、給与や雇用の安定といった側面からモチベーションを高めるのです」と研究者は説明している。

協同組合モデルは、他では得られないような質の高い仕事を若者に提供することで、この問題を克服することを目指している。例えば、ロンドンで運営されているWings(ウィングス)というプラットフォームは、存在するさまざまなフードデリバリーアプリに代わる倫理的な選択肢を提供することを目的としている。これには、配達員により公平な給与と条件を与えることも含まれている。

「希望があり、良い仕事があるということを広く伝えることが重要です」と、英国協同組合CEOのローズ・マーリーは、ナショナル・ユース・サミットで私に語った。

国連の国際労働機関が最近発表した報告書は、若者の失業に取り組むために必要な多面的なアプローチについて強調している。このような協調的な対応を取ることが本質的に困難であることを考えると、おそらく願望を高めることがより身近な出発点となるかもしれない。

翻訳=上西 雄太

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