インポスター症候群が「悪」ではない理由

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自分には周囲が思っているほど能力がないと思い込む「インポスター症候群」を抱える人は、意外にも多い。米企業マネーペニーによる最近の調査では、米国人の3人に1人がインポスター症候群だとされ、最も多かった18〜24歳では46%に上った。また、自己疑念を抱える女性は35%で、男性(30%)よりも多かった。

自分の能力不足を感じるのは一般人だけではなく、著名人やオリンピック選手でも同じだ。例えば、昨年の東京五輪で金メダルを獲得した米国の体操選手スニーサ・リーはESPNのインタビューで、帰国後にインポスター症候群に悩まされたと告白。また、人気歌手で女優のジェニファー・ロペスですら、最近のローリングストーン誌のインタビューで、自分にはインポスター症候群があることを認めている。

インポスター症候群に関しては、ネガティブな面が取り上げられがちだが、実は悪いことばかりでもない。インポスター症候群には多くの利点があることを理解し、最終的には同症候群を肯定すべき理由を、以下に紹介する。

・対人関係が改善する


マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院のバシマ・A・トゥーフィク助教は、インポスター症候群を持つ社会人に対する実地調査と実験を行った。結果、インポスター症候群の人はそうでない人よりも他人の評価を気にする傾向にあり、結果として対人関係に長けていることが分かった。つまり、インポスター症候群により、対人関係が改善するのだ。対人関係は、仕事での成功に欠かせないもののひとつだ。

・努力を促す


インポスター症候群の人は、自分が足りないと思う点を自然に補おうとする。つまり、自分の価値を証明しようと、一層の努力をするのだ。インポスター症候群はまた、自分のスキルと知識の不足を補うために、より賢く行動しようとするモチベーションになる。自分と同僚の間にあると感じる能力の差に注目し、そのギャップを埋めようと努力することで、自分の望む結果につながるかもしれない。これは自分の知識が広がり、技能が高まっている可能性を示すものであり、喜ばしいことだ。
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編集=遠藤宗生

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