年間でみると、2019年に1038万人を記録した観光客の数は、コロナ禍が始まった2020年には270万人まで落ち込んだ。しかし、2021年は677万人まで回復、そして今年はさらに上を行く数字となるのは確実だ。ちなみにハワイ州全体の人口は約145万人。人口より観光客の数のほうが多い、まさに観光で成り立つ州なのである。
ハワイ・オアフ島の人気スポット、ハナウマ湾 (c) Hawaii Tourism Authority (HTA)
とはいえ、日本人の観光客に関しては、2019年は157万人だったが、コロナ禍以降の2020年は28万人、2021年はトータルで2万人と激減していた。ちなみに2019年と2022年のゴールデンウィーク期間中の日本からの1日平均の旅行者数(空路のみ)を比較すると、2019年の5035人に対し、2022年はたったの368人だった。直近の8月に入ってからは、1日1000人を超える日もなくはないが、数字で判断する限り、日本人の観光客の戻りはまだまだという水準だ。
ハワイ州は、2022年3月に屋内でのマスク着用義務を解除し、検疫と事前検査プログラム「セーフ・トラベル・ハワイ・プログラム」も終了させた。ハワイ側としては「日本からの観光客ウェルカム」という状況なのだが、円安ドル高に加え、燃油サーチャージの高騰、日本国内の爆発的な感染拡大など、日本側では海外旅行を敬遠するネガティブな状況がまだ続いている。
ハナウマ湾の水質がさらに向上
そんなハワイで注目すべき変化が生じている。コロナ禍を経て、ハワイの自然はすっかり浄化されてしまったのだ。
まず海がきれいになった。シュノーケリングビーチとして観光客に人気のハナウマ湾は「海水の透明度が42%増した」と発表された。調査したハワイ大学の海洋研究所によれば「水質向上だけでなく、生息する海洋生物の生態にも変化があり、ウミガメやモンクシール(ハワイのアザラシ)も増えた」という。
同研究所は、コロナ禍以後の2021年4月から6月まで、ハナウマ湾で週1回採水して、透明度を測定。「長期間、人が海水に入らなかったことで、水中での堆積物が混濁せず、水質が向上した」と透明度向上の要因を分析した。他にもサンゴ礁の健康悪化現象とされる白化現象が、2020年以降は見られなかったという調査結果もある。
実はハナウマ湾は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年3月16日から12月2日まで実に261日間、閉鎖されていた。それ以前も水質維持のために休業日を設けていたが、ここまで閉鎖されたのは近年では初めてだ。
ハワイ州で最初の「海洋生物保護区域」に指定されたハナウマ湾は、その独特な生態系を守るために、入場者には教育ビデオの視聴を義務付けたり、前述のように休業日を設けたりするなどをしていたが、皮肉にもコロナ禍での「人間の入場禁止」がもっとも効果的な環境保全の施策となったことになる。
水質の向上は誰にでも歓迎されることではあるのだが…… (c) Hawaii Tourism Authority (HTA)/Heather Goodman
この水質向上を受けて、ハワイ州はハナウマ湾の入場者数を従来の4分の1となる1日1000人に制限。オンライン予約も導入し、休業日は週3日に増やし、入場料もこれまでの12ドルから25ドルに大幅に値上げした(州内在住者は無料)。
ハワイ州の政策は、これまでの観光振興よりも環境維持にシフトしつつあり、近年は環境保全などをきちんと理解したうえで来島してほしいと訴えている。ハナウマ湾だけでなく、ワイキキやアラモアナの海も「きれいになった」と言う人は多く、透き通った海はとても気持ちいい。