こうしたなか、ニュージーランドのワインメーカー、ギーセン(Giesen)は、2022年度の米国向け出荷が前年比454%増という驚異的な伸びとなった。米国の消費者の間で高級ノンアルワインの需要が高まっていることを示す一例だ。
ギーセンでは、スピニングコーンカラムと呼ばれる装置を使って脱アルコールを行っている。筒状のこの装置にワインを入れて回転させ、アロマとボディー、アルコールの3層に分離、アルコール部分のみを取り除く仕組みだ。現在はソーヴィニヨン・ブラン、ロゼ、レッドブレンド、ピノ・グリのアルコールゼロ%ワインを提供しており、今年秋にはリースリングも追加する予定という。
ニールセンIQによると、ソーヴィニヨン・ブランは米国のプレミアム価格帯(12ドル=約1600円以上)でもっとも売れている品種。ワインの輸入販売を手がけるパシフィック・ハイウェイ・ワインズのマーク・ジョルダーノ社長によると、ノンアルロゼでもギーセンの商品は6月末までの4週間に売り上げ2位につけたという。
ニールセンIQの昨年末の調査によれば、直近1年間のオンライン売上高はビール・ワイン・スピリッツが26%増だったのに対し、ノンアル・低アルコール飲料は315%増を記録した。6月末時点の最新データによると、ノンアルワインの売上高は過去52週間で22%伸びている。
ノンアルの何が魅力なのか。以前なら、「お酒は飲みません」というのはおもに節制している人や妊娠中の女性、車の運転手などから聞かれる言葉だったが、最近はもっと気分的な理由からノンアルを選ぶ人が増えている。たとえば、きょうは飲みたくない、コンディションを整えたい、翌朝早く起きる必要がある、といったものだ。
ノンアル市場は今後も成長が見込まれる。マッチングアプリ「Hinge(ヒンジ)」の調査によると、Z世代のユーザーの75%は初デートでお酒を飲むのは好まないと回答した。またニールセンの調べによると、ミレニアル世代の66%が酒量を減らす努力をしている一方、ノンアル購入者の78%はアルコール入りのビールやワイン、スピリッツも買っているという。
商品の多様化が進んできたことも成長の一因だ。ほんの数年前まで、ノンアル飲料は種類が比較的限られ、アルコールゼロのビールやワインが数ブランドあっただけだった。しかし、今では何十ものブランドが100種類以上の商品を売り出している。
最近はヒューストンの「シップル」、デンバーの「アウェイク」、ピッツバーグの「オープンロード」などノンアル専門店も登場し、人気を集めている。ボワソンはニューヨークだけで5店舗を構え、ロサンゼルスにも1店舗を開設している。