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2022.08.12 07:00

米株式市場は「10月に底打ち」へ、証券業界の大物が予言

Getty Images

証券業界の大物のトーマス・ピタフィ(Thomas Peterffy)が、今後の経済見通しや、株価が底打ちする時期などについて語った──。米国では、6月の消費者物価指数が前年同月比で9.1%上昇し、40年ぶりの高水準を記録した。これを受けて主要株価指数が急落するなど、株式市場は大きく動揺した。

オンライン取引プラットフォームInteractive Brokersの創業者で会長のトーマス・ピタフィ(77)は、投資家はインフレに慣れる必要があると指摘する。「インフレ圧力は、今後数ヶ月ではなく、数年間続くだろう。これは短期的な問題ではない」とピタフィは話す。

181億ドル(約2兆4500億円)の資産を持つピタフィは、インフレが長期化する理由として、以下の点を挙げている。

・数十年にわたる米国の慢性的な財政赤字
・グローバリゼーションの逆回転により生じているサプライチェーンの混乱
・熟練労働者の不足とオートメーションの進展
・企業がESG(環境、社会、ガバナンス)目標を自ら課すことによる生産コストの増加
・インフレを抑制するはずの金利上昇が、逆説的にインフレを長期化している

「FRB(連邦準備制度理事会)が金利を上げることで、国債費が増加する。これは悪循環で、ゆくゆくは借金が爆発的に増えることになる」とピタフィは言う。しかし、彼は1980年代にポール・ボルカーFRB議長が金利を2桁まで上げてインフレを退治したものの、深刻な不況を招いたような事態には至らないと考えている。

「FRBは、“インフレ退治のためなら何でもする”と言っているが、彼らがそれを実行するとは思えない。FRBは、経済を破壊することや、債務の爆発的な増加を恐れている」とピタフィは言う。彼は、FRBが基準金利を4%前後に抑え、その結果として今後数年はインフレ率が6%程度で推移し、スタグフレーションが当面続くと予想する。

株式市場は秋に底打ちへ


ピタフィの見通しは暗いが、彼は米国の株式市場が秋にも底を打つと見ている。彼は、10月頃にS&P500種株価指数が現在の3800ポイントから21%下落し、3000ポイントに達する可能性を指摘している。

「いずれ物価の上昇は株価に追いつき、インフレによって株価は長い強気相場に入るだろう。今は企業を研究し、株式の保有を増やす絶好の機会だ」とピタフィは言う。彼は、特定のセクターや業種に投資するよりも、自社の競争力強化に投資し、市場シェアを伸ばしている企業に投資するべきだと指摘する。

ピタフィは今年1月、法定通貨の暴落をヘッジするために、資産の2〜3%を暗号通貨に投資するべきだと述べていた。しかし、その後は暗号通貨は価格の下落や流動性危機に襲われ、ピタフィの自信は低下しているという。

「どこかのタイミングで、ビットコインが無価値になるか非合法化される可能性は非常に高い」とピタフィは話す。彼は、暗号通貨が違法行為の資金源になることに対する懸念や、米財務省が暗号通貨による決済を管理・追跡したり、税金を徴収することができないことから、米政府が暗号通貨を禁止する可能性があると考えている。

しかし、ピタフィは、デジタル資産を完全に見限ったわけではない。彼は、ビットコインの価値が高騰する可能性を信じて持ち分を保有し続けており、価格が1万2000ドルまで下落すれば、追加購入する予定という。

ピタフィが考慮しているのは、株式市場だけではない。今後の見通しを尋ねると、彼は「サバイブしたい」と笑いながら答えた。

編集=上田裕資

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