ただ、充電所へのプール設置は、単なる夏の楽しいアトラクションではない。製品を魅力的な体験と抱き合わせ、エクスペリエンスエコノミー(経験経済)を成長させるという、より大きなムーブメントの一環だ。
テスラは最近、ドイツ・ヒルデンで、車を高速充電中にプールが楽しめるスーパーチャージャー充電所をオープンさせた。他の充電所には、冷暖房を備えたビデオゲームラウンジやカフェ、テスラのグッズ販売店などが併設されているところもある。
もはや、良い製品を出すことだけでは足りず、製品にまつわる素晴らしい体験を作り出すことが重要となっている。成功するブランドが他と異なるのは、製品を販売するだけでなく、素晴らしい体験を提供し、顧客の生活をより楽で良いものにすることに注力していることにある。魅力的な体験を提供する企業は、顧客を理解し、製品の周りにコミュニティーを作ろうとしていることが分かる。
テスラは何も、充電場所でこうした体験を提供する必要はない。それでも、暑い日に涼をとれるプールを設置することで、顧客がより楽しめる体験となり、自社ブランドに対する好感度や忠誠心が向上する。
テスラの顧客体験は、車を引き渡したら終了ではなく、テスラ車の所有者は充電所のプールなどの専用施設を利用できる。ユニークな体験を提供することで、顧客はそのブランドに胸が高鳴り、忠実度が高まる。
拡大するエクスペリエンスエコノミー
こうした取り組みはテスラだけではない。単に製品を売るだけでなく、顧客の心に訴える体験をつくることに取り組む企業は増えている。
キッチン用品を販売する米企業シュール・ラ・ターブル(Sur La Table)は店内でプロのシェフによる料理教室を開催。米ホームセンターのホーム・デポは家の修繕方法を教えるワークショップをネット上と店舗で多数提供している。
アウトドアグッズ販売の米REIは、店舗での販売のみの事業から移行し、アウトドアのイベントやツアーを企画して商品を活用する場をつくることに多額の投資を行っている。昨年は、こうしたイベントの数を60%増やした。