「見えない」の壁を溶かす イノベーティブな製品が続々誕生

足元の振動で道案内するナビゲーションシステム「あしらせ」(資料提供:Ashirase)

インクルーシブなサービスの市場を最大化させるためには?


東京2020オリンピック・パラリンピックの開催やSDGsの浸透で、以前よりは世の中に認知されているインクルーシブなサービス。しかし企業によっては、未だに福祉事業としての面が強いのが現状だ。
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市場の中でどのように展開していけば、事業としてより発展し、成り立つことができるのだろうか?

デモデイの審査中に行われたパネルディスカッションで、ReGACY Innovation Groupの高倉渉氏を司会進行に、参天製薬の朝田雄介氏、インターナショナル・ブラインドフットボール・ファウンデーションの理事兼事務局長の大坪英太氏、VISI-ONEアクセラレータプログラム アドバイザリーボードの葭原滋男氏によって、様々な意見が交わされた。

「特定顧客の課題解決において、ターゲットユーザーはどのような広がりを持つのか?~インクルーシブな事業設計による市場の最大化について~」をテーマに、パネルディスカッションが行われた
「特定顧客の課題解決において、ターゲットユーザーはどのような広がりを持つのか?~インクルーシブな事業設計による市場の最大化について~」をテーマに、パネルディスカッションが行われた
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朝田雄介氏(以下、朝田):私たち(参天製薬)には「Ophthalmology」(眼科医療への貢献)、「Wellness」(健康な目の追求)、「Inclusion」(共生社会の実現)という三つの戦略がありますが、CSRの観点から進めると、なかなか浸透しづらい。福祉の領域かつ障がい、その中でも視覚障がいに絞って事業を進めるのはどうなのか?とも言われますが、(ターゲットを絞り過ぎているようで実は)そうではない、ということを示していかなくてはいけない。今回の「VISI-ONEプロジェクト」のような活動を推進することで、事業の広がりの可能性を示していく、かなりポテンシャルがあると私は思っています。

高倉渉氏(以下、高倉):事業として広がっていけばいいという、理想ですね。今まで体験してきたサービスで、最初のユーザーの理解が足りていないから、最終的にいい結果に結びつかなかった、これはよく考えられていたから結果も広がったというケースなど、今まで体験した中でありましたら教えていただけますか?

葭原滋男氏:バッドケースでいうと、音響式信号機がありました。日中はいいのですが、夜になるとボタンを押しても音が出ないんです。これはどのように改善すべきか、ヒアリングしたり話し合ったりしています。グッドケースは宅配便ですね。視覚に障がいのある人は宅配便の不在票を見ることができず、気付いたら期限を過ぎていて受け取りができなかったということが多かったそうです。そこで当事者の方から「不在票の角に耳みたいなものを付けてみては?」というアイデアを出してもらって、いい方向へ話が進んだものもあります。

高倉:最初の段階での作り込みにいかにユーザーの意見を反映させるか、それが大きな成果に繋がっていくということですね。

大坪英太氏:お互いを理解するためには会話をしていくこと、当事者の方がどう考えているのかを理解するのが重要かなと。相手のことを知るために、自分の経験などを一度リセットして、新たな気持ちでいろいろ聞いてみるのがいいと思います。

朝田:また、今回のようなエクスクルーシブデザイン(個人のためにあるような限られたターゲットに向けたデザイン)は、他の事業へも展開できる可能性を十分持っている。例えば私たちは製薬会社ですが、他の企業と組んだり、今回参加された企業の持つ技術を使えばもっと幅広く展開できるんじゃないのかなと思います。

高倉:異業界への展開によって、いかにその価値があるのか考えるきっかけになればいいですね。


今回のデモデイで発表された6社の「見えない」の壁を溶かす技術とアイデアは、福祉事業という段階を超え、事業として成り立つ可能性を存分に証明した。

そして、視覚障がいに関わる課題を解決するだけでなく、私たちの生活、そして未来にイノベーションを起こすものとなるはずだ。

文=中沢 純(パラサポWEB) 写真=佐々木 健

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