「見えない」の壁を溶かす イノベーティブな製品が続々誕生

歩行時に役立つ情報を教える「EyeNavi」/コンピューターサイエンス研究所


AIの画像認識技術で、歩行時に役立つ細かな情報を教えてくれるアプリ 「EyeNavi(アイナビ)」/株式会社コンピューターサイエンス研究所
資料提供:コンピューターサイエンス研究所

視覚に障がいがある人の安全な歩行を支援してくれるiPhone用アプリ。GPSによって現在地を知ることができ、周囲の画像をAIが解析することで右左折の方向や障害物の有無、信号の色、点字ブロックなどを音声で細かに伝えてくれる。手にスマホをずっと持っている必要がなく、ストラップで首にぶら下げて使用できるのも魅力だ。

屋内の誘導は電波発信機(ビーコン)で行っており、将来は施設内での買い物のサポートができるようにアップデートしていくとのことなので、EyeNaviによって自由に買い物を楽しめる日も近いことだろう。

審査員からは、「このアプリを使い、視覚に障がいのある一人旅YouTuberといった存在を育ててみると楽しいのでは?」という興味深い提案も。代表取締役社長の林秀美氏は、「日本全国の施設やお店、観光地などの情報はデータとして取り込んでいて、今後は観光地の情報に特化したものも考えています。近々ですと、伊勢神宮の下宮の道順や歴史の紹介、まわりのお店の紹介などを考えています」と教えてくれた。

自販機の場所を発見し購入できるアプリ「VEMNA」/MAMORIO


健常者と変わらず、自販機の場所を発見し購入できるアプリ 「VEMNA」/MAMORIO株式会社
資料提供:MAMORIO

視覚障がいのある方が、一人ではほとんど自動販売機を利用することがない、という事実をご存知だろうか? たとえ、自動販売機を見つけることができ、購入するとしても、何が出てくるか全くわからない「ロシアンルーレット」のようなものだという。

こちらのVEMNA(Vending Machine Navigator Application)は、貴重品の置き忘れや紛失を防ぐスマートトラッカーの近接検知技術を活用し、自動販売機の場所や購入をナビゲートするアプリだ。電波発信機が取り付けられた自動販売機に近づくと音声で知らせるだけでなく、販売している飲料の種類も読み上げてくれる。

日本は世界一の自動販売機大国(全国に約400万台設置)であり、売り上げも年間5兆円と言われている。日本に住む約30万人の視覚に障がいのある方が自動販売機で新たに購入ができるようになると、年間で120億円以上の売上の増加に貢献するとのこと。これは事業としてのポテンシャルもかなり高いアイデアと言えそうだ。現在、ある飲料メーカーの協力を得て、公式アプリ対応の自動販売機数十万台を想定し、2023年の商用化を目指しているとのこと。

目的地までQRコードで誘導する音声アプリ「shikAI」/リンクス


一人でも迷わず移動可能!目的地までQRコードで誘導する音声アプリ 「shikAI(シカイ)」/リンクス株式会社

駅の出口や列車、改札、トイレ、駅事務室、券売機など、目的地を選択すると、点字ブロックに貼られたQRコードを読み取ることで、進む方向や距離を音声で読み上げ伝えてくれるiPhone用アプリ。すでに東京メトロの9駅や豊島区の区役所、図書館でも導入が開始されている。

iPhoneのカメラをQRコードにかざすだけで使える簡単さや、「右に〇〇メートル」や「この先は階段で〇〇段下がります」など音声で細かく教えてくれるため、実証実験では参加者から「まるで横にガイドさんかヘルパーさんに付き添ってもらっているようです」と言った感想もあげられていた。視覚に障がいのある方は駅員に介助を頼む時、待つことが多いそうだが、これならもっと気軽に一人歩きがしやすくなるだろう。

また「点字ブロックを使っての可能性を教えてください」との質問に、「点字ブロックは、鉄道機関のみならず、いろいろな場所でかなり広範囲に設置されています。視覚障がい者だけではなく、晴眼者や海外の方も使えますし、さらに発展できると思います」と答えていた。
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文=中沢 純(パラサポWEB) 写真=佐々木 健

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