ウクライナの穀物を狙い撃ちするロシア、影響は世界全体に波及

Russian invaders strike agricultural facility in Zaporizhzhia Region(Photo credit should read Dmytro Smolyenko/ Ukrinform/Future Publishing via Getty Images)

ロシア大統領ウラジーミル・プーチンが仕掛けた戦争は、ウクライナに壊滅的な影響をもたらしている。国連の世界食糧計画(WFP)によれば、紛争と不安定な状況がもたらしたウクライナの人道危機は、世界最速ペースで悪化している。

しかし、影響を受けているのはウクライナだけではない。この危機は、世界中の多くの国々でも実感できる。また、プーチンはウクライナ侵攻でウクライナ産穀物をターゲットにし、非難を浴びている。収穫前の穀物を爆撃したり、穀物輸出を妨害したりしているためだ。

ウクライナ戦争が起こったことで、黒海と、その北部にある内海のアゾフ海沿いにある主な港は閉鎖され、ウクライナ産穀物の輸出量は激減した。その上、ウクライナ国内の広大な農地が、ロシア軍によって占領されている(秋まき小麦用の農地の半分、ならびに、ライ麦農場の40%を含む)。

ロシア軍には、農地を意図的に攻撃しているとして非難が集まっている。6月には、ウクライナ最大の穀物貯蔵庫を砲撃して破壊。5月にも、穀物倉庫1カ所を攻撃している。

英国議会で行われた討論では、リバプール選出の貴族院議員アルトン卿が、ウクライナ紛争による影響についてこう述べた。「世界では、4億人もの人々がウクライナ産の穀物に依存している」

アルトン卿は、さらにこう続けた。「世界の食料供給において、ウクライナが占める規模とその特性、ならびに、ロシアが果たす役割は目を見張るほどだ。従って、ウクライナ産穀物の入手が困難であることは、世界に破滅的な結末をもたらす。ロシア連邦あるいはウクライナ、もしくは両国は2021年、小麦、大麦、トウモロコシ、菜種、菜種油、ひまわりのタネ、ひまわり油の輸出量で世界のトップ3に入っていた。ウクライナの国民総生産(GDP)に占める農業と食料の割合は、ほぼ10%だ。ウクライナが2021年、世界に向けて輸出した食品は280億ドル近くに上る。そのうちの74億ドル分は、欧州連合(EU)に輸出された」

ウクライナ産小麦への依存度が大きい国々には、ソマリア、リビア、ガンビア、モーリタニア、チュニジア、エリトリアなどがある。

ウクライナとロシアは2022年7月22日、国連の仲介によって、ウクライナ産穀物をオデーサ港、チョルノモルシク港、ユジニ港の港湾施設から安全に輸出するという合意文書に署名した。国連はこの合意を「人類にとって希望の光」と呼んだ。

しかし、この合意を滞りなく実行に移すには、関係各国の緊密な連携が不可欠だ。にもかかわらずロシア軍は、合意から24時間と経たないうちにオデーサ港を攻撃した。

米国連大使のリンダ・トーマスグリーンフィールドはこれについて、「ロシア連邦は合意後にオデーサ港を攻撃し、本性を現した。困窮する世界の人々に食料を届けるために、ロシア連邦は、穀物と食料をオデーサ港から安全に輸出できるようにすべきだ」と口調を強めた。

8月2日には、ウクライナ産穀物を積んだ貨物船の第1便がトルコ沖に到着した。両国の合意が引き続き守られなければ、世界の食料不安は新たな水準に達し、膨大な数の人々が、栄養失調や飢餓の危機に直面することになるだろう。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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