いわゆる「プレゼン上手」な人には、どんな共通項があるのか。その「型」を分解したのが、今回のテーマ「プレゼン工学」だ。
「広告業界のプレゼンはなんだか違うぞ……!」
それは入社して最初に感じたカルチャーショックだった。ガチガチの理系大学院出身の当時の僕にとって、プレゼンとは「考えを理路整然と述べるもの」。研究成果をわかりやすくまとめ、原稿にした時点でもう終わったも同然。あとは、当日壇上に立ち、原稿を淡々と読み上げるだけ……と、そんなイメージを持っていた。
ところが、会社に入ってから見たプレゼンはもう、全然違う。のらりくらりと雑談から始める人がいれば、いきなり結論をズバッと言い切る人もいる。同じようなプレゼンはひとつとしてなかった。そして何より、それらのプレゼンはどれもとても聞きやすかったのだ。「これは何か秘密があるぞ」。そう思った僕は、いい! と思った先輩のプレゼンを注意深く観察してみることにした。
プレゼンがうまい人には共通する「型」がある
いくつものプレゼンを見るうちに気づいたことがある。それは、自分がいい!聞きやすい!と思ったプレゼンには、どうやら共通点があるらしい、ということ。よく見ると、「このやり方は、あの人に似てる!」と、共通の要素が見つかるようになったのだ。
ちょうどそんなころ、京都のとある小学校の先生から「生徒たちのプレゼン能力を伸ばしたい!」という仕事の依頼がきた。そこで僕は、先生と一緒にある実験をやってみた。「他人のプレゼン-1グランプリ」。
同じテーマについて考えてきた2人が、プレゼン直前に原稿を交換。相手の原稿で、いかに上手にプレゼンできるかを競う。つまり、プレゼンのスキルのみを浮き彫りにしてしまうのだ。結果、面白いことがわかった。何度やってみても、勝ち上がる生徒はだいたい一緒。プレゼンがうまい生徒は、どんな原稿も上手にプレゼンできたのだ。
ここで、ひとつの仮説が生まれた。どうやら、プレゼンがうまい人は、共通する「型」がある。だとすれば、型さえマスターしてしまえば、誰でもプレゼン上手になれるのでは……?
これが、僕が提案する、プレゼン上手を量産する仕組み「プレゼン工学」の基本的な考え方だ。