プレゼンがうまい人には共通する「型」がある

プレゼン上手を量産する仕組み プレゼン工学


「型」をまねてみる


具体的な手順を説明しよう。まず、プレゼン上手な人たちを注意深く観察。彼らが多用しているプレゼンの型を抽出する。僕はこれを「技」と呼んでストックしている。

例えば「ビッグモーション(身振り手振りでワードや物量を強調)」「3秒サイレント(要点を言う直前に間をつくる)」「クエスチョン(聞き手に問いを投げかけ引き込む)」といった具合。パッと読んで、すぐまねできる粒度まで一般化すると使いやすい。

ある程度「技」をストックできたら、次は、実際に使ってみる。原稿はなんでもいい。僕がよくやるのは、辞書から引っ張ってきた「犬」と「バナナ」の説明文。あえて、味気ない平坦な文章にしておくのがポイントだ。「この原稿を、技を使ってプレゼンしてください」そう言ってやってもらうと、誰が読んでも、平坦な文章が劇的に変わる。これまでに、高校〜大学〜社会人の方々とワークショップを実践してきたが、どんな人でも「技」を使うと、メリハリのあるプレゼンができるようになった。

さて、ここまでで、プレゼン上手をつくる仕組みは半分成功。誰がやっても聞きやすいプレゼンが再現できたところで、もう一歩上の「記憶に残るプレゼン」を目指す方法を考えたい。

プレゼンに「パーソナリティ」を入れる


さまざまなプレゼンを見てきたなかで、印象的なプレゼンは、必ずしも聞きやすいだけではなかった。関西出身の先輩の、必要以上に下から目線でいく「自虐プレゼン」や、老齢の先輩の、静かに語りかけるような「詩人プレゼン」。そういった、ほかではあまり見ない、その人にしかできないプレゼンは、強く記憶に残っている。

著名人でいうと、ジャパネット高田社長の「ハイトーンボイスプレゼン」なんかもそうかもしれない。つまり、鍵は「パーソナリティを感じさせること」にありそうだ。そこで、最も手軽に自分のパーソナリティをプレゼンに入れ込む方法を最後にお伝えしよう。

それはズバリ、「エピソード」という技。プレゼンのなかに、個人的な体験談や主観を入れ込むのだ。例えば先ほどの「犬」の原稿をプレゼンする場合。「僕が買うなら自分と顔が似ているチワワですね。親近感湧きますし」と主観を入れたり、「僕、岐阜県出身なんですけど、岐阜って実は犬の形をしてて……」のような雑談から始めてもいい。たったそれだけのことでも、プレゼンにその人の色が出る。体温が乗る。誰でもできる技なので、試してみてほしい。

今回書いた、「型を習得すれば、誰でもプレゼン上手になる」という仮説は、いまも実証実験の真っ最中。もし気になった方がいたら、ぜひご一報を。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

飛田ともちか◎コピーライター・プランナー。電通Bチーム内の教育研究所「アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」所属。プレゼンの伝え方を考える「中身のいらないプレゼンの授業」を開発&全国で実施中。

文=飛田ともちか イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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