介助犬がPTSD症状を緩和する? 興奮しにくい犬が効果的か

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オープンアクセスの科学誌「プロスワン(PLOS One)」に発表された新たな調査では、介助犬を与えられた兵役経験者の間で心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状の重症度が下がったことが裏付けられた。

PTSDは、軍産業で働く人や兵役経験者に大きな影響を与えることで知られている。またこのことから、兵役経験者の間では自殺による死亡リスクもはるかに高い。疫学紀要(Annals of Epidemiology)に2015年に発表された調査によると、戦場に配備された兵役経験者は米国一般集団と比べて自殺のリスクが約41%高い。

兵役経験者の間では、心の健康と生活の質を改善しようと、精神医学面で訓練を受けた介助犬を活用する人が増えている。こうした犬は、軽く突いたり圧力をかけたりするなどの手法で悪夢を見ている人を起こしたり、フラッシュバック(過去の出来事を思い出すこと)を止めたりすることができる。

介助犬がPTSDの症状の一部を緩和できる仕組みをより深く理解するため、米インディアナ州パデュー大学のクレア・ジェンセンら研究者らは、82人の兵役経験者とそれぞれの介助犬を調査した。参加者は、訓練された介助犬を兵役経験者に提供する非営利団体ケーナインズ・フォー・ウォーリアーズ(K9s For Warriors)の軍人と兵役経験者のデータベースから集められた。

研究者らは「人間とペットと同様、それぞれの兵役経験者と介助犬の組み合わせはユニークで、多次元にわたるものだ。ペットの犬と行うさまざまな活動や関わりと同様、介助犬とそれを扱う人の関係は全て同じものではない」と研究に記している。

参加者らが研究に登録した3カ月後、研究者らは兵役経験者と犬の関わりについてより深く理解するべく、兵役経験者の心の健康状態を一連の検査を通して評価した。また研究者らは、兵役経験者と犬の絆の強さも考慮した。

その結果、飼い主がいるときに介助犬が興奮しづらいと研究者が判断したケースでは、PTSDの症状の深刻度が低下し、さらには犬と兵役経験者の間の関係がより親密になっていた。
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翻訳・編集=出田静

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