経済・社会

2022.08.09 17:30

従軍聖職者、戦争は人間の心と体を破壊する

独立記念日の街頭デモで、カーキ色の軍服を着たロシア・ウクライナ戦争の退役軍人の列にいる従軍聖職者(ウクライナ・キーフ、8月24日)(Oleksandr Polonskyi / Shutterstock.com)


知り合いの韓国軍元将校も入校までは特に信じる宗教がなかった。「嫌いな先輩がいる」「仏教よりキリスト教の方が何となく格好いい」といった理由で、結局プロテスタントを選んだという。韓国軍の主要基地にも、この3つの宗教施設が設置されている。元将校は「詳しくは知らないが、有事になれば、必ず3つの宗教の従軍聖職者が戦場に同行することになるようだ」と話す。
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従軍聖職者は、世界各地で古来、戦争が起きるたびに、その活動が確認されてきた。日本も戦国時代のほか、日中戦争など近代でも従軍僧が活動してきた。その仕事は、現地での戦没者の埋葬のほか、戦地での伝導・布教活動など様々だった。宗教者という身分を生かし、和平交渉の仕事を担った例もある。韓国軍の元将校は「従軍聖職者は、戦地で、死の恐怖に悩む兵士や、敵を殺した兵士らの悩みを聞く仕事も担うことになる」と語る。

また、別の自衛隊元幹部は出張先の米国で、米軍がイラク戦争当時、イラク軍から鹵獲した戦車を見せてもらったことがある。戦車を操縦する米軍兵はガスマスクをつけていた。元幹部が理由を聞いたところ、「イラク兵の失禁した匂いが残っているからだ」と教えてもらった。元幹部は「現実の戦争は映画のように格好の良いものではない。戦車兵は戦闘になればトイレにも行けないし、ものすごい恐怖にとらわれる。こんな戦車は珍しくないそうだ」と語る。

ロシアがウクライナに侵攻して24日で半年になる。人間の肉体も精神も破壊する戦闘が止む気配はまだない。
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文=牧野愛博

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