「大規模チームが問題を解決する方法」アポロ13号のクルーが教える教訓(その3)

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「映画の欠点は、真の参加者が描かれていないことです」とヘイズはいう。NASAの管制官を除けば、映画に登場する地上チームはマイナーな扱いだった。「そうした地上チームの役割は、映画で描かれていたものより大きいものでした」と彼は付け加えた。

宇宙飛行士たちは、順調かつ健康的に仕事をするための鍵となる暖房、給水、テレメトリなどの制限を受けながら、宇宙での厳しい環境下で作業を行っていた。しかし、ヘイズは、ある意味、地上管制官の方が条件は悪かったという、問題を解決するチームの睡眠時間は宇宙飛行士よりも短かったのだと主張した。

「多大な献身が必要でした」とヘイズはいう。「スケジュールのプレッシャーで、家族にまで苦労をかけた、本当に多くの人たちの努力の結晶なのです」


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この本の中でヘイズは、救助を成功させた無名のチームに賛辞を送っている。オーストラリアのチームは、アポロ13号の通信に使用できる電力が通常より少なかったため、追跡ステーションを改造してアポロ13号の通信に役立てた。カナダのトロント大学は、南カリフォルニア大学と協力して、着陸前に2つの宇宙船を安全に分離するための衝撃力学解析を行い、NASAが自らの仕事と照らし合わせられる独立した分析結果を送った。

ヘイズは、チームが協力し合い、フィードバックを受け入れ、問題解決に必要なステップを踏むことに集中しようとする姿勢が、ミッションの成功に大きく貢献したのだと語った。クルーはといえば、月着陸を継続させることが最大の関心事だったようだ。

ヘイズは自著の中で「失敗した飛行に対しての否定的な反応ではなく、とても肯定的な反応を示してもらえたことが嬉しかったのです」と書いている。「帰り道でずっと心配していたことでしたので」。

アポロ計画は資金削減のため、一部の人が思い描いていたようなアポロ20号までは実現できなかったが、13号の事故後、1972年12月のアポロ17号までに4回のミッションで月への到達を果たした。

本連載の第4回では、技術系プロジェクトにおいてはアイデアは計画ではないという話題を取り上げる。

翻訳=酒匂寛

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