アップル、グーグルが苦慮する「暗号通貨詐欺」アプリ

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米上院銀行委員会のシェロッド・ブラウン委員長は、アップルのティム・クックCEOとグーグルのサンダー・ピチャイCEOに対し、両社のアプリストアを介して偽の暗号通貨アプリが広まっている実態について情報を求める書簡を出した。

この数年、暗号通貨詐欺を可能にするアプリがアップルのアップストアやグーグルプレイでダウンロード可能となっている。これらのアプリは正規のアプリに酷似しており、騙されたユーザーがログイン情報を提供したり、偽の取引所に送金してしまい、暗号通貨を盗まれるケースが多発しているという。

上院銀行委員会の委員長は7月28日、アップルとグーグルに書簡を送り、暗号通貨詐欺を可能にしていると思われる取引アプリを両社がどのように精査し、アプリストアへの登録を許可したのか説明を求めた。

この書簡は、同委員会が開催した「暗号通貨・証券市場における詐欺とリスク(scams and risks in crypto and securities markets)」に関する公聴会が開始する数時間前に送付された。アップルとグーグルは、委員会に対して直ちに回答しなかったが、両社とも正規のアプリになりすましたり、違法行為や詐欺行為を行うアプリの登録を許可していないと述べている。

アップルは先日、2021年に約15億ドル(約2020億円)の詐欺取引を阻止したことを明らかにし、アップストアこそがアプリを見つけ、ダウンロードする上で最も安全な場所であると述べた。

書簡を執筆したオハイオ選出のシェロッド・ブラウン民主党上院議長は、アプリストアが詐欺行為を防止する措置を講じることが必須であると指摘した。両社の回答期限は、8月10日となっている。

偽アプリの1つ「Metatrader 5」は、暗号通貨詐欺への関与が指摘されているが、現在でもアップルとグーグルのアプリストアでダウンロード可能だ。

多くの場合、詐欺グループの活動は、ターゲットにテキストメッセージやリンクトインのメッセージを送り付けることから始まる。他にも、出会い系アプリでターゲットにメッセージを送る場合もあるという。

詐欺グループは、ターゲットとしばらくメッセージを交換した後、コインベースなどの正規の企業から暗号通貨を購入させ、それをMetatraderなどのアプリを使って偽の取引所に送信させる。被害者は、利益を得たと信じこまされるが、その後資金を引き出そうとしても出金できないことに気が付く。
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編集=上田裕資

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