ゼロで死ぬ。人生が豊かになるお金の使い方

ゼロで死ぬ。人生が豊かになるお金の使い方

『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ダイヤモンド社)が売れている。

著者でテキサス州在住のヘッジファンドマネジャー、ビル・パーキンスは、「経験に投資し、人生を楽しみ、お金を使い切って『ゼロで死ね』」と説く。チーズを食べることなくホイール(回し車)で走り続けるネズミにはなるな、と。

PCスクリーンの向こう側で、野球帽をかぶって笑顔で話すパーキンス。優しそうな目が印象的な彼に、「ゼロで死ぬ」ことの意味を聞いた。


ー「死ぬまでに、お金をすべて使い切る」「ゼロで死ぬ」ことを提唱するのはなぜか、教えてください。

ビル・パーキンス(以下、パーキンス):「ゼロで死ぬ」ということは、「後悔もゼロ」で死んでいくことだ。人生の目的を成就させて幸せになる、という哲学に基づいている。

人生の目標に向かって、どのように健康と富、時間を使い、最大の充足感を手に入れ、銀行残高をゼロにして死んでいくか。人生のどの時点で、やりたいことに、より多くの時間とお金を使うべきかが問題だ。

人の健康は33歳を境に衰え始める。お金を経験に転化し、その経験から喜びを得る能力も低下する。人生のどの時点で、いくらお金を使うべきかを示す曲線は年齢や健康によって違う。

私は53歳だが、これ以上お金をためても、使わなければ、死の床で、お金を経験に変えることはできない。稼ぐために使った人生の時間やライフエネルギーが無駄になり、非効率的だ。

ゼロで死ぬのが効率的だが、問題は無駄の最小化だ。何歳でどのような経験をしたいかを決め、自らが意図した人生を生きることが大切だ。

ー富の最大化ではなく、人生の喜びを最大化するという概念ですね。

パーキンス:純資産よりも、充足感や幸せのほうが大切だ。お金は、やりたいことをやるためのツールにすぎない。

最も大切なのは、「オートパイロット」をオフにすることだ(注:「オートパイロット」は自動実行を意味するIT用語)。つまり、流されることなく、自分の頭で考え、意識的に人生を送ることだ。

ー経済的に豊かになるだけでなく、「真の人生を送る」ことをテーマにした本を書いたのはなぜですか。

パーキンス:若いころ、人生は何のためにあるのかといった問題に悩み、実存的な危機に陥った。「30歳になるまでに、お金持ちになりたい」と言う人が多いのはなぜか。なぜ90歳ではないのか。そして、楽しい経験を積むには旬の年齢があることに気づいた。

ひるがえって私の両親は、無料で旅ができたとしても、家に居ることを選ぶ人たちだった。だから、私もそうなるだろうと思った。晩年になったら、お金をあまり使うことはないだろう、と。

そして、稼いでも使わずに死んでいくとしたら、人生が無駄になるという不安に襲われたのだ。それ以来、「ゼロで死ぬ」ことを目指すようになった。
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インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=ミカエル・ベドナルスキー

この記事は 「Forbes JAPAN No.093 2022年月5号(2022/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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