グッチは高級ブランドのなかでも、他社に先駆けて暗号通貨の受け入れを開始した1社だ。その同社は8月3日、対応する通貨に新たに「エイプコイン(APE)」を加えたことを明らかにした。
グッチが対応している暗号通貨はこれで、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、ドージコイン(DOGE)、シバイヌ(SHIB)、米ドルとペッグ(連動)している5種類のステーブルコインなど、合わせて15種類となった。
初めに暗号通貨での決済を導入したのは、わずか5店舗だった。つまり、グッチは慎重に受け入れを開始したといえる。だが、高級品の顧客層を引き付けるには、その迅速な拡大が適切と判断したのだろう。
暗号通貨決済サービスのプロバイダー、ビットペイ(BitPay)のスティーブン・ペアCEOは、この決済プラットフォームについて、「需要に対応しているにすぎない」と述べている。
例えば、グッチがエイプコインを加えたのは、ユガ・ラボ(Yuga Labs)が所有する人気の高いNFT(非代替性トークンの)アートコレクション「ボアード・エイプ・ヨット・クラブ(Bored Ape Yacht Club、BAYC)」と関連したものであり、顧客の需要は大きいという。
ファッション誌WWDなども、BAYCはセレブリティーをはじめ、富裕層の間で人気が高いと指摘。「今後はエイプのエコシステム全体において、主要なトークンになっていくだろう」と伝えている。
値動きの荒い暗号通貨の世界での投資は、それ自体がアドベンチャースポーツのようなものだ。価格は常に大きく変動しており、非常に投機的な投資になる。グッチがそうした暗号通貨を導入したのは、ビットペイのぺアCEOが述べているとおり、顧客の需要に対応することが理由だろう。
また、グッチにとって暗号通貨を受け入れることは、今後の取り組みに向けての戦略的な行動ともいえる。これまでにもグッチは、デジタルのコレクターズアイテム、アバター用ウェアラブル、NFTを販売するなど、積極的にこの分野での取り組みを展開している。
オンラインゲームのプラットフォーム「ロブロックス(Roblox)」や、ブロックチェーン技術を活用したデジタルゲームの「ザ・サンドボックス(The Sandbox)」など、バーチャルな世界との連携も強化してきた。
暗号通貨の導入において、他の高級ブランドをリードしてきたグッチの狙いは、富裕層を引き付けることだ。そして、グッチはナイキやティファニーなどとともに、冒険心が必要なこの新たな取り組みにおいて、最前線に立ち続けようとしている。高級品業界に新たなアイデアをもたらすのが、こうした“リーダーたち”の行動であることは間違いないだろう。