トランジスタ自体はアメリカのベル研究所で発明されて、その親会社であるウエスタン・エレクトリック社(WE社)が製造特許を保有。特許使用料を支払った会社に特許を公開していました。特許料は2万5000ドルと当時の東通工からすると高額で、通産省は町工場に毛が生えた程度の東通工にトランジスタなんてできるわけがないのに貴重な日本の外貨を使われてはたまらないとなかなか許可を出さなかったのです。
技術支援を受ける代わりにトランジスタを使ったすべての商品に対して特許使用料を支払うアンブレラ契約を大手他社が結ぶなか、技術供与なしで特許権だけを買い取ろうとする東通工の試みは確かに無謀ともいえるものでした。ところが、WE社は自社でテープレコーダーをつくりあげた東通工であればと製造特許使用者としての許可を出します。
その段になっても通産省の許可は出ないまま、東通工はまずはトランジスタの自社生産に着手することになりました。それまでの真空管式ラジオと同じでは意味がないと、東通工はポータブルかつ小型のトランジスタラジオを開発。米国の人たちが発音しやすいものにしようということで、東通工に代えて「SONY」マークを入れ、世に送り出しました。
トランジスタラジオはソニーの名を世界に広げただけでなく、当時は下に見られがちだった日本の技術力への見方を変え、日本製品のイメージを変えさせるきっかけともなったのです。
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