シェールガスに沸く米国、天然ガス生産量と消費量が世界トップに

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この記事は、「BP Statistical Review of World Energy 2022(BP世界エネルギー統計レビュー 2022)」に関するシリーズ第4弾だ。このレビューは、国レベルでの主要なエネルギー源の需要と供給の包括的状況を提供している。これまでのシリーズ記事では、エネルギー消費全般、二酸化炭素(CO2)排出量、石油の需給について説明してきた。

この第4弾では、天然ガスの生産と消費を見ていきたい。

世界の天然ガス消費量は、2021年に過去最高に達し、2019年の記録を3.3%上回った。

天然ガスは、燃焼時の大気汚染が最も少ない化石燃料だ。また、最も急成長を遂げている化石燃料であり、過去10年間における世界全体の年平均成長率は2.2%だった。

それに対して、原油の過去10年間における世界全体の成長率は0.7%、石炭は0.1%だ。天然ガスは、今後20年間で需要の実質的な増加が見込める唯一の化石燃料だと予測されている。

米国はここ10年、シェールガス・ブームに沸いており、一気に世界最大の天然ガス生産国に躍り出た。2021年には、生産量が過去最高を更新。世界全体の天然ガス生産量に占める割合が23.1%と、他を圧倒した。ロシア(17.4%)と中東全体(17.7%)を超えたことになる。

2021年、天然ガス生産量の上位10カ国が、世界の天然ガス総供給量に占める割合は72.6%だった。米国の生産量は、2021年に前年比で2.3%増え、1日あたりの生産量が初めて90BCF(900億立方フィート)を超えた。2021年の生産量は、シェールガスのブームが始まった当初の2005年と比べて91%増えている。

天然ガス生産量Top 5* BCF/日 シェア 増減

米国 90.4 23.1% 2.3%
ロシア 67.9 17.4% 10.4%
イラン 24.8 6.4% 3.1%
中国 20.2 5.2% 8.1%
カタール 17.1 4.4% 1.4%
*2021年のデータ

米国はまた、世界最大の天然ガス消費国でもある。つまり、天然ガスの主要生産国であり、主要消費国でもあるわけだ。

天然ガス消費量Top 5* BCF/日 シェア 増減

米国 80.0 20.5% -0.4%
ロシア 45.9 11.8% 12.4%
中国 36.6 9.4% 12.8%
イラン 23.3 6.0% 3.2%
カナダ 11.5 3.0% 5.5%
*2021年のデータ

米国で天然ガスの生産量が急増したことで、天然ガス液(NGL)生産においても、米国は世界トップに躍り出た。米国のNGL生産は世界全体の44.8%を占めており、その大半は精製されるか、石油化学製品になる。

しかし、米国は生産した天然ガスの大半を自国で消費しているため、液化天然ガス(LNG)輸出量では3位となっている。2021年にLNG輸出シェアで世界1位になったのはオーストラリア(20.9%)だ。そのあとに、カタール(20.7%)、米国(18.4%)、ロシア(7.7%)、マレーシア(6.5%)が続く。

とはいえ米国は、LNG輸出国としても非常に速い成長を見せている。過去10年間の年平均成長率は49.1%だったほか、2021年のLNG輸出量は、2019年比で100%増となった。このペースなら、米国は年内にもLNGの世界最大輸出国になるはずだ。

次回のシリーズ第5弾では、世界の石炭市場を取り上げたい。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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