スタートアップの登竜門と名高いスタートアップ・カタパルト(ICC FUKUOKA 2022)では見事優勝。2030年に4000億円の流通額を目指し、直近で新たな資金調達も完了している。生産者、ロースター、生活者、そして投資家から支持されるサービスとはどんなものなのか。
コーヒー生産者と1袋から取引できる
1970年代の大量生産・大量消費を背景に、コーヒーは石油に次ぐ国際商品となった。世界で1日に30億杯も消費される巨大市場だ。
しかし、先物市場で取引されるコーヒーは、定量的に価格が決まっている。コーヒーの67%は小規模生産者によって生産されているが、自分たちで価格をコントロールできないため、うち44%は貧困状態にある。
一方で、質の高いコーヒー豆への需要は年々高まりつつある。そこで、ティピカは小規模生産者であっても少量から生豆を世界へダイレクトトレードできる仕組みを構築した。従来のコーヒー豆取引では麻袋300袋が基本とされていたが、それを1袋から取引可能にしたのだ。
これにより、生産者自身が販売価格を決めて、味を評価するロースターへ直接売ることができる。
その取り組みが評価され、ティピカは2021年4月の日本でのローンチからわずか半年後、10月に59カ国でサービスを提供を開始。これまでにないグローバルなプラットフォームに成長した。
永続的発展を求める原体験
ティピカ代表の後藤 将氏が、ずっと追求していることがある。
「人類の幸福と経済の永続的発展(Sustainable development)」だ。
これには後藤氏のルーツが深く影響している。小学校の卒業文集に書いた将来の夢が「社長になってお金持ちになること」だった後藤氏は、19歳で起業。がむしゃらに働いて利益を上げ、会社を拡大し、人からも賞賛された。
しかし、自分が思い描いていた幸福な未来はそこになかったという。どれだけ贅沢な生活をし、人から認められても、全く満たされることがなかったという。