スイス、医療用大麻を完全合法化 輸出も可能に

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スイスでは今月1日、他の欧州諸国に続き、医療用大麻が完全合法化された。

医療用大麻を必要とする患者はこれまで、スイス連邦公衆衛生局(FOPH)の許可を求める必要があったが、今後は医師の処方により利用が可能となる。

さらに、医療用大麻の商業目的での輸出も可能になった。企業は輸出に際し、医薬品承認機関スイスメディックの許可を得る必要がある。

議会は3月、スイス政府の要請に基づき、医療用大麻合法化に向けた麻薬法の修正を承認した。政府は合法化の理由として、利用許可の申請が近年増えたことに言及。これにより行政面での多くの負担や治療の遅れが生じており、大麻はもはや麻薬法に基づき許可を出すべき例外的医薬品ではなくなったと説明した。

スイス公共放送協会(SBC)のサイト「SWI swissinfo.ch」によると、連邦公衆衛生局は2019年、がんや神経系疾患、多発性硬化症の患者に対し約3000件の許可を出した。ただ、これ以外にも違法市場で大麻を入手した患者は存在する。

合法化の対象となるのは、テトラヒドロカンナビノール(THC)が1%未満でカンナビジオール(CBD)を多く含む製品のみ。嗜好(しこう)用大麻は引き続き違法となる。しかし、スイス政府は大麻規制に向けた情報収集のため、北部バーゼルで約400人のボランティアを対象に、成人向け嗜好用大麻の試験販売を開始する予定だ。

ジュネーブ大学は6月、スイスでの大麻合法化による経済効果は年間約10億3000万ドル(約1400億円)に上り、フルタイムの雇用が約4400件生まれると推定した調査結果を発表。2020年に発表された別の調査結果では、国内大麻市場の規模は最大約5億2000万ドル(約690億円)と試算された。

CBDは精神活性作用をもたらさないことから麻薬法の対象とはならず、スイスで近年人気を集めてきた。医療用大麻の合法化はスイスの多くのCBD企業に利益をもたらすだろう。企業はTHC含有率が1%未満のCBD商品を輸出できるようになり、スイスは欧州で競争力を得られる。

スイス政府は医療用大麻を合法化し適切に規制することで、大麻を使用した治療を利用しやすくし、大麻を必要とする患者への違法販売を抑制して国民を守ることを目指している。

欧州では近年、同様の理由で大麻合法化に動く国が相次いでいる。ただ、成人向け嗜好用大麻の販売を合法化しようとしている国は現時点ではドイツのみのようだ。しかし他の国も大麻使用の規制緩和を進めており、例えばマルタは昨年、欧州連合(EU)加盟国で初めて個人使用のための大麻栽培を合法化した。

編集=遠藤宗生

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