「よくスポーツのコーチや解説者が、勝ったチームは攻撃的で屈強だったと言うのを聞いたことがあるでしょう」と彼は説明する。「われわれの研究結果は、この言説と真っ向から矛盾しています」
彼は2021-2022年シーズンのゴールデンステート・ウォリアーズがNBAチャンピオンシップを奪取しただけでなく、リーグ内で最も反則の少ないチームのひとつだったことを例にあげた。
ブアデス・ロジャーは、スポーツにおける攻撃性の最も一般的な理由は、実は本質的に戦略的なものだと強調する。これは、敗者が見せる怒りや反則プレーは、自分たちのスキルのなさを補うためであることを意味している。
「具体的には、人は攻撃性を競争力の源として使っているのであり、腹いせのためではないことをわれわれのデータは示しています。これは、選手は相手に対して単なる苛立ちから感情をあらわにしているわけではないことを示唆している。そうではなく、攻撃性はスキルの違いを埋めるための巧妙な戦略だと思われます」と説明する。
対照的に、高い競争的地位にある優れた選手たちは、冷静を保ったまま純粋なスキルの力で勝利を得る。
更に研究結果を注意深く応用すれば「熾烈な職場や、怒りのコントロールに問題のある人々など、競争環境全般に適用できる」ことも示唆している。
「この研究は、攻撃的人物に対応している発達心理学者やスポーツ心理学者にとっても興味の対象であるかもしれません」と彼は説明する。「それらの人たちにとっても一般の人たちにとっても、われわれの研究結果に基づいて、シンプルなアドバイスを一つ与えることができるでしょう。負けているときは、自分を見つめて、冷静を保ち、フェアにプレイすることです」