4〜6月期末の家計債務残高は1〜3月期から3120億ドル(2%)増えた。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が起こる前の2019年末に比べると約2兆ドル増えている。
ニューヨーク連銀のジョエル・スカリーは声明で、4〜6月期の債務が増えた理由について、商品やサービスの価格が40年ぶりの高さに上がるなか、住宅ローン残高や自動車ローン残高、クレジットカードの利用が「堅調に伸びた」ためと説明した。
金利の上昇によって住宅購入需要が抑えられたため、住宅ローンは組成額こそやや減ったものの、残高は1〜3月期から2070億ドル増えて11兆4000億ドルに拡大。これが全体の債務残高を押し上げる主な原因になった。
クレジットカードの残高も前四半期から460億ドル増え、債務全体の増加の2番めに大きな要因になった。前年同期比では13%増となり、過去20年あまりで最大の伸びを記録した。
米経済の状態について懸念が高まるなか、スカリーはあらゆる種類の債務で延滞が「緩やかに増加」しており、とくに低所得者層ではそれが顕著にみられると警鐘を鳴らした。一方で、家計は全体としては「健全に見える」とも述べている。
報告書によると、4〜6月期に新たな差し押さえがあった人はおよそ3万5000人と1〜3月期から45%あまり増えた。これは差し押さえが「より標準的な水準」に戻りつつある兆しかもしれないという。四半期あたりの新規差し押さえ数はパンデミック前には10万件ほどだったが、パンデミックに入って以降、差し押さえを禁じる各種モラトリアム措置によって低い数に抑えられてきた。
米景気は2020年のコロナ不況から回復し、消費はこれまで、米連邦準備制度理事会(FRB)によるインフレ対策の利上げでリセッション(景気後退)の懸念が高まるなかでも底堅く推移している。
だがニューヨーク連銀の研究員らは2日のブログ記事で、負債残高が急増しているうえ、所得が最低クラスの地区では昨年約2%だった延滞率が最大2.5%までじわじわ上がるなど、一部の借り手は返済に苦労し始めていると指摘。歴史的な低水準にある現在の延滞率は終わりが近づいているようだと警告している。