テクノロジー

2022.12.04 10:30

睡眠中の脳内を監視・調節、携帯用スカルキャップで「どこでもMRI」

Wonderfulengineering

人間の脳の働きはいまだに未解明な点が多く、実際に知られていることはごくわずだ。2012年に科学者たちが大きな飛躍を遂げた。彼らは深い眠りについている間に脳内の有害な老廃物を脳脊髄液で洗い流す役割を担うゴミ処理機構(glymphatic system)を発見した。

どこでも「MRI」の実現へ


このゴミ処理機構がうまく働かないと、アルツハイマー病などの神経疾患を発生させると考えられている。しかし、この影響を詳しく調べるには、複雑なMRI検査が必要だ。MRI検査のプロセスを単純化するため、米軍はライス大学、ヒューストン・メソジスト病院、ベイラー医科大学の研究者に研究費を供与し、睡眠中の脳内の液体の流れを監視・調整できる携帯用スカルキャップの開発を進めている。

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ライス大学バイオサイエンス・バイオエンジニアリング研究所(Institute of Biosciences and Bioengineering/IBB)の理事を務めるPaul Cherukuriは、「MRIは簡単に持ち運ぶことができないため、国防総省から睡眠中の兵士の脳の健康状態を測定・調節してパフォーマンスを高めることができる小型で携帯可能なキャップを設計できないかと要請されました」と述べる。「このプロトタイプを開発するには、まず既製の装置から始め、そこから学びながら、ライス独自のセンサー技術やアルゴリズムを構築する必要があります」

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睡眠障害や神経障害の治療に寄与するか


この携帯用スカルキャップは、様々な方法を用いて脳からの信号を受け取る着用可能なハードウェアで構成され、新しいアルゴリズムを用いて処理されることになるという。この信号は、様々なセンサーを使って収集される。プロトタイプの開発チームによると、この技術は兵士に役立つだけではなく、患者にとっても有益であることが証明されている。睡眠中に脳内で何が起きているかを理解することにより、科学者は睡眠障害や神経障害の新しい治療法を開発することができるだろう。

この研究への助成金は、初年度に280万ドルにのぼり、最初のテストの成功率を踏まえ、複数年にわたるプロジェクトになることが期待されている。

(この記事は、英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」から転載したものである。)

編集=石井節子

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