アートがあり、アーティストがいる街は、人に何をもたらすのか?

深井厚志(左)と杉山 央(右)


──だからこそ、生活空間に近いところにアートがあり、アーティストがいるのが重要ということですよね。最後に、今後のお⼆⼈のアートによる街づくりに関わる活動の展望や、構想について教えてください。

杉山:具体的なところでは、2023年にオープンする虎ノ門・麻布台プロジェクトの中に、文化施設をつくります。その場所に行かないと得られない価値を知ってもらう、新しい美術館を目指しています。

虎ノ門ヒルズ・ステーションタワーも2023年に開業します。地上49階建ての最上部には新しい文化・発信施設を作ります。世界でも類似がないユニークな施設になる予定です。音楽ホールもあれば、広大な展覧会の会場、屋上にはイベントスペースもある。まさに様々な人が交流できる場です。

世界中に新しいプロジェクトや建物ができている中で、当初考えていたコンセプトを継続させるにはコモディティ化しない価値を作れるかが重要です。この文化施設は、一見すると経済合理的にはビハインドな施設。通常、音楽ホールは防音性の問題もあるので高層階には作らないんです。でも、これぐらいの覚悟した姿勢が見えると、新しいことをしたい人が集まってくると考えています。

長期的なビジョンでは、クリエイターやアーティストの表現の場所を作ること。街全体が美術館になっていくようなものを作りたいと考えています。デバイスが進化していれば、それがARやメタバースになっているかもしれないですね。

深井:私は人と人を繋ぐことが仕事なので、これからチャレンジしていきたい人たちのサポートができたらいいなと思っています。日本は文化芸術に関して「後進国だ」「未来がない」と言われることも多いですが、それでも私は日本に固執して、何とかしたいと思っています。

別に文化芸術大国にしたいわけではないのですが、国際的な文化芸術シーンで立ち位置が確立された国にしたい。日本で生まれたアーティストが活躍の場を手にしたり、海外アーティストが日本を活躍の場として選んでくれたりする国にできると私は思っています。そのために全力でできることをやっていきたいですね。日本を捨てない、「負けない」ということでしょうか。



私はアート畑出身なので、どうしてもアート優位に考えてしまいますが、社会全体との交わりに関しては、アーティストが食えるようになればいいかといえばそうでもなく、有名な美術館で展覧会をできるエリートを生めばいいかといえばそうでもない。それよりも、アートが特別なものとして扱われるのではなく、当たり前のように社会経済の中に位置づけられる、新しいエコシステムをつくることが重要ではないかと思ってます。

文=堤美佳子 ポートレート=小田駿一 編集=鈴木奈央

タグ:

連載

ART & BUSINESS

ForbesBrandVoice

人気記事