ビジネス

2022.08.02 19:00

ナスダックに上場した日本人社長は、事業のタネをどう見つけたのか


中道:名古屋から出たくなかったって話から、もう全然違う話になってますね。でもきっと、楽しかったんですね?

東田:めちゃくちゃ楽しかったですね。「やれる!」っていう、根拠のない自信がありました。アメリカ(サンディエゴ)は天気が良いですし、こんなに人がいるなら水がバンバン売れると思い込んでいて。だからご期待に添えるような計画やストーリーは、実はないですけど。

中道:いやいや、十分だと思いますよ。それで、今でも水はやられてるんですか。

東田:残念ながら今はやってないです。アメリカでも水は差別化できないと売りにくく、さらに、ニュージーランドから運ぶコストも高く、高いモノを薄利で販売する形でした。英語も上手ではないし、ネットワークもありません。

どうするか、というときに、逆に、“軽くてマージンが高くて差別化できるもの”を探そうとして、当時グーっと伸びていたエナジードリンクに注目しました。

中道:「モンスター」とか「レッドブル」とか。

東田:はい。ただ、マージンは高そうなんですが、それでは2番煎じになってしまう。ミーティングをする中で、「エナジーコーヒー」や「機能性コーヒー」がないという議論になり、じゃあ機能性コーヒーを製造して販売してみたらどうかと、コーヒーに舵を切りました。

中道:エナジーコーヒーや機能性コーヒーっていうカテゴリがあったわけじゃないですもんね。

東田:はい、今もあまりないと思います。アメリカの人は、コーヒーにヘーゼルナッツやバニラのエッセンスを入れたりするんですが、そういう風に、機能のある成分を追加します。

当時我々は、「クロロゲン酸」をコーヒーに追加していました。クロロゲン酸はコーヒーの豆から取れて、糖質の吸収を緩やかにする成分です。結果的に余分な脂肪の溜め込みを防いだり、脂肪燃焼を促進したり。豆からとったクロロゲン酸をもう一度コーヒーに追加するとダイエットに繋がるって、ちょっとミステリアスで良いなと。ほかには、リラックスを促進するようなサプリを混ぜたりもしました。


当時販売していた商品(写真提供=NuZee)

カテゴリーとしても商品としても存在しなかったので、「他と違うね」「見たことないね」と、多少流通が進んでいきました。そこから、コーヒーを軸に他と差別化するという視点を強く持つようにして、商材を探そうと心掛けていた時期が2014年、15年です。

中道:そこからドリップバッグに広がっていくんですか。

東田:そうですね。日本では普通にあるドリップバッグコーヒーがアメリカにはないことに、コーヒーやるようになってから気付いたのです。機能性コーヒーも良いですが、ちょっとしたアイデアで、小手先というか……。どこかで、もっとドスンと基幹産業になり得るようなものをやりたいという思いがありました。

それで、ドリップバッグコーヒーをアメリカの人達に見せたら反応が良いんです。「機械も要らず、お湯だけで美味しいコーヒーが飲めるなんて凄い」と。ないものって、見せるだけで差別化なんですよね。これだ!と思って、そっちに舵を切りました。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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