ミズノのタクシーサービス付き白杖、「持って出かけたくなる」コンセプトに注目


なぜスポーツメーカーであるミズノが、障がいのある人のためにここまで踏み込んだものづくりをすることになったのか。そのきっかけは、講演会で一般社団法人PLAYERSリーダーのタキザワケイタ氏の話を聞いたことだった。

PLAYERSは企業と連携しながらプロダクトやサービスの社会実装を推進することで、社会問題を解決へと導いていく集団。これまでにも、LINEと連携させた点字ブロックなどを開発している。

そんな取り組みに感銘をうけた数名の社員がPLAYERSに参画し、社内の新規事業開発のコンテストに共同で応募したことが始まりだった。

PLAYERSが開発した発信機内蔵の点字ブロック「VIBLO BLOCK」。点字ブロックに近づくとLINEに場所情報などが届き、視覚障がい者の外出を「声」で支援することができる
PLAYERSが開発した発信機内蔵の点字ブロック「VIBLO BLOCK」。点字ブロックに近づくとLINEに場所情報などが届き、視覚障がい者の外出を「声」で支援することができる

ミズノケーンの開発チームメンバーのひとり、ミズノ営業統括本部営業統括部の長谷川知也氏は開発にいたった経緯を次のように語ってくれた。

「PLAYERSさんは、社会課題を解決する色々な取り組みをされていますが、当事者の方の声を聞き一緒に製品やサービスを作り上げていくといったところが魅力的でした」(長谷川氏)

ミズノ株式会社営業統括本部営業統括部の長谷川知也氏
ミズノ株式会社営業統括本部営業統括部の長谷川知也氏

実際、ミズノケーンの開発チームのPLAYERS側のメンバーには視覚障がいの当事者である中川テルヒロ氏らも参加。その他、多くの視覚に障がいのある方や歩行訓練士などに協力してもらい、使い手の声を反映している。

企業が「D&I」の取り組みを成功させるには?


企業が社会課題を解決するという取り組みがここまで早く形になったケースは稀だとタキザワ氏。

「企業の場合、リサーチや実証実験で終わってしまうことが結構あります。でもミズノさんの場合、手探りではありましたが、『白杖を作る』という方向性が比較的早く決まりました。

白杖は言ってしまえばただの棒ですが、実現したい世界を思い描きながら、細部にとことんこだわり、ミズノさんのテクノロジーを最大限に活かすことに集中できたので、進め方としてはとてもスムーズだったと思います。それは、ミズノさんがブランドスローガンとして掲げている『REACH BEYOND』、新しいイノベーションに取り組もうという動きが、今回の白杖プロジェクトにうまくはまったのではないでしょうか」(タキザワ)

一般社団法人PLAYERSのリーダー、タキザワケイタ氏
一般社団法人PLAYERSのリーダー、タキザワケイタ氏

このような「ダイバーシティ&インクルージョン」に繋がるような企業の試みは会社の利益に直接的に結びつきづらいため、なかなか形にすることが難しいという側面もある。

「こういうプロジェクトって現場レベルの共感や熱意といったボトムアップから始まるケースが多いのですが、どこかでトップダウンというか、『会社ごと』にして、ビジネスデザインをしていかないと、途中でスタックしてしまうことも多いと思います。

『それって儲かるの?』という一言で簡単に潰されてしまうので…」(タキザワ氏)
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文=濱中香織(パラサポWEB) 画像提供=ミズノ株式会社

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