そのサンプル回収ランダーには、火星探査機(Mars Ascent Vehicle、MAV)と呼ばれる小型ロケットも搭載される。新たな計画ではパーサヴィアランスがプラットフォームに戻り、密封されたサンプル管をロケット先端のノーズコーンにある容器に収納する。そのために、欧州宇宙機関(ESA)が開発したサンプル移動アーム(Sample Transfer Arm)を使用する。
その後火星探査機は、火星上空の地球帰還オービターと合流するために飛び立つ。
そうなれば地球帰還オービターは、地球から火星(あるいは他のあらゆる惑星)へ行き、再び帰ってくる初めての宇宙船になる。
このミッションに、パーサヴィアランスおよび2機の新しいヘリコプターを使用することは、NASAによる大きな計画変更だ。
「この概念設計段階では、ミッション計画のあらゆる側面が精密に調査されます」とワシントンのNASA本部の科学ミッション副本部長トーマス・ズルブチェンは語った。「計画には大がかりで有意義な変更がいくつか加えられますが、それらはパーサヴィアランスのジェゼロ・クレーターでの最近の成功や、火星ヘリコプターのすばらしい活躍によるものです」
このミッションは、NASAの探査ローバーであるパーサヴィアランスがジェゼロ・クレーターの各所に置いてきたサンプルを回収することを目的としており、10年にわたる調査を経てゴーサインが出た。
報告書の中で、MSRは「NASAのロボット探査の取り組みにおけるこの10年で最優先の科学プロジェクト」であり、「NASA、米国の惑星科学におけるリーダーシップ、および国際協力にとって根本的な戦略的重要性」をもつとして推奨されている。
報告書はさらに、MSRのコストは割り当てられた53億ドル(約7兆円)を20%以上超えることはないはずだともいっている。この新しい計画(まったく新しいローパーの必要性を減らす)はコストを可能な限り下げられる可能性があるが、同時にパーサヴィアランスの寿命の長さにも強く依存している。