この経営者が経営するレストランは、2021年後半の時点でコロナ禍の前の2019年時の売り上げを超え、いまもその売り上げを維持している。連日、店は満席、ランチの開店前には行列ができることもあるそうで、嬉しい悲鳴というところだ。
さらに、ハワイだけでなく全米のレストランには、円換算で億単位のRRF(Restaurant Revitalization Fund=レストラン再生ファンド)という補助金が支給されており、コロナ禍での経営打撃からは完全に回復している。そんなこともあり現在の黒字はプラスアルファの特需なのだ。
飲食店も米国人向けの味付けに
このレストランに限らず、ハワイの飲食業界の現在の景気の良さは、主に米国本土からの観光客が増加して、業績が復活したことによるものだ。
2021年の夏頃を境に、本土から観光客がどっと押し寄せ、その数はコロナ禍前を軽く超え、米国からの観光客だけでホテルがほぼ満室になるようになってしまった。
理由には、コロナ禍の影響で格安の航空券が出回った、外国に行けないのでハワイへの「国内旅行」が人気となった、など複数の理由が取り沙汰されているが、正直、どれが正解かはわからない。とはいえ、ハワイの観光客数だけ見るとコロナ禍前の9割近くまで回復しており、そのほとんどが本土からの観光客という事実に揺るぎはない。
米国本土からの観光客の定番「チーズケーキ・ファクトリー」
すでにホテルは9割以上の稼働率、ワイキキを中心にレストランは予約が取れない状況で、レンタカーは不足状態。観光に携わる人たちは俄然忙しくなっていて、ハワイにとっては良いことだが、そこに「日本人観光客の居場所がない」事態が起きている。観光産業に関わるある会社経営者は次のように語る。
「米国本土からの観光客のチップの支払いの良さにあらためて驚きました。ツアーの場合など、ツアー代金と同じだけのチップを置いていく人もいる。ありがとうという感謝の気持ちをしっかりチップの額に反映させるのが米国流なのです。
レストランのチップも以前は15%から20%が相場だったのですが、最近は18%から22%に上がり、それ以上に払う人もいます。その気前の良さを覚えた従業員のなかからは、日本人観光客はもう来なくてもいいという声も聞こえてきます。とかく日本人はチップに疎いこともあって、料金以外の費用を出すのにはシビアですからね」
次のように語る飲食関係者もいる。
「レストランでは大皿をいくつか注文して、取り分けるのが日本人のスタイル。米国人はこうした『シェア』を好まないので、各人でメインを1皿ずつ頼むことが多い。デザートもそれぞれに1皿。そうするとおのずと注文数も増える」
つまりは、米国人観光客が来ていれば、単価も高く、チップも豊か。経営安泰という認識なのだ。