ABEMAディレクターが語る、映像コンテンツとしてのサーフィンの魅力


最高品質か唯一無二か。サーフィンは後者になれる



ABEMAディレクター 藪本拓也さん◎1988年、東京都生まれ。2014年、サイバーエージェントに新卒入社。以降、動画制作に携わり、現在はスポーツエンタメ局に所属。スポーツ中継の責任者として多くの番組制作に携わる。サーフィンの試合は、ライブ放送は無料で、アーカイブは有料で視聴することが可能。今年から番組スポンサーも募り始めた。

テレビ屋としてだけでなく、サーファーとしても日本のサーフィンを盛り上げていきたい。そのような思いを抱く藪本さんが、ABEMAのスタッフとしてサーフィンに対してできるのは「プロサーフィンの試合を放送する」ことだ。

多くの人に見てもらいたいという思いを持ち、そのため常により良い演出法を思考している。無論、番組継続のために数字をあげることも重要だ。

「ABEMAでは制作コンテンツに関して“最高品質か唯一無二を目指す”というスローガンがあります。

スポーツならMLBはABEMAで放送している最高品質のコンテンツ。サーフィンも最高品質を目指していますが、おそらく勝ち筋としては唯一無二の魅力を突き詰めていくことだと、僕は感じています。

というのも競技性以外の楽しみ方に乏しい多くのスポーツに対し、サーフィンは音楽やアート、ツーリズムなどの視点からも語れるように多面的です。

勝敗の行方を追いながら副次的な要素を絡めた放送内容にすることはできないか? そのようなことを常に考えています」。

試合自体の中継方法にも伸び代はあるという。

「サーフィンの試合の面白さは、20分〜30分の制限時間内に、いかに点数の出るいい波を摑めるかどうかの勝負にあると言えますし、その世界観を映像表現するのが僕らの仕事。

先日、今年の日本代表を決める大会『第3回 ジャパンオープンオブサーフィン』を放送しましたが、会場が自然の海ではなく人工的に波を造り出すサーフィン用プールであったこともあり、二画面にして見せるなど今までとは違った演出に挑めました。

とても意義深い仕事にはなったのですが、先の展開が読めないスポーツらしい緊張感を作り出せなかったという反省も、個人的には残りました」。

緊張感は筋書きがないために生まれる“スポーツならではの感動”の総量に影響する。さらにその感動は見る者を魅了し、ほかのスポーツに加え、映画や情報バラエティなど他ジャンルのコンテンツと差別化される要因ともなる。ゆえに大切なのだ。

それにしても波も時間も管理できる環境でさえ“盛り上げ”の演出は難しいのだから、少しの先行きも読めない自然の波が舞台の場合はなおさらだろう。

特に日本での試合には、波のサイズが小さく数も少ない状況がよくあり、選手が沖で波を待ち続ける模様は視聴者を退屈にさせてしまう。

「以前からの課題です」と藪本さんも認め、だからこそ効果的な見せ方を発見できれば“最後の数分での逆転劇”といったサーフィン特有の面白さや感動を大勢と共有でき、間口を広げていく契機になるはずだと考えている。
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写真=渡辺修身 編集・文=小山内 隆

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